都立武蔵丘vs都立昭和
あわやノーヒットノーランから9回、初安打を生かした武蔵丘が辛勝
ついに均衡を破る三塁打を放った武蔵丘・戸田君
今春の東京都大会で早稲田実を下して一躍注目校となった都立昭和。この秋も、一次ブロック予選では都立校の強豪総合工科との接戦を制して進出。充実感を漂わせている。また、都立武蔵丘も、一次予選の2試合はいずれも1点差勝ちで勝負強さを示してきた。
そんな、お互いの一次予選の戦い方を象徴するようなロースコアの接戦となった。どちらも、なかなかホームベースの遠い試合だった。
都立武蔵丘は足を挙げてから、ぐっと体を沈めるような感じで投げ込んでくる阿部君、都立昭和は背番号11ながら、制球力がよく歯切れのいい投球の河田君が先発。どちらも、自分の投球リズムを守っていて、間合いもよく、どんどんの投げ込んできていて、相手に考える余地を与えないくらいである。お互いに、なかなか得点機会すら作れないという状況で試合が進んでいった。果たして、どちらがどういう形で得点を挙げていくのだろうかと思わせた。ただ、内容的には都立昭和がいくらか押し気味ではあった。5回まで進んでも時間は50分足らずというスピーディーなものだった。
5回まで都立昭和は2安打、都立武蔵丘は無安打のままだった。無死の走者は初回に都立昭和の先頭打者の小山君がバント安打して出塁した時の身だった。
最大の得点機が6回の都立昭和に訪れた。この回2番澤田君からだったが、左前打で出塁。チーム3本目の安打だった。田中修平君がしっかりとバントで送ると、続く大石君も右前打して一三塁。二塁走者の澤田君は三塁で自重した。5番村松君は1ボール2ストライクと追い込まれながら、中堅へ飛球。三塁走者はタッチアップかと思われたが、ここでも自重。続く、上野君の遊ゴロは難しい当たりだったが、都立武蔵丘の吉田君が好守備で間一髪アウト。都立武蔵丘はピンチを切り抜けた。
しかし、都立武蔵丘打線はテンポのいい河田君を攻略する糸口がつかめないままだった。膠着状態の中で、最初に動いたのは都立武蔵丘で、江里口 肇一監督は8回、好投を続ける阿部君の打席で代打を送った。しかし、結局この回も無安打のままだった。8回からは一塁手の左腕岡田君がマウンドに立ったが、都立昭和も無得点のまま。延長の気配も漂ってきていた。
そして、9回も河田君は先頭打者を右飛に抑えるが、あわやポテン安打かという打球を村松君が好捕した。何となく、そろそろ捕まりかかってきたかなという感じもしないでもなかったというところで、3番津幡君が中前へチーム初安打を放つ。何か、緊張の糸が切れたかのような感じもあったが、出塁した津幡君も足が攣るというアクシデント。緊張感がまた高まってきた。
独特のフォームで好投した武蔵丘・阿部君
そして、都立武蔵丘では最も期待ができるという4番戸田君を迎える。2ボールからの3球目、やや高めの肩口から入ってきた球を叩くと、打球はセンター澤田君の頭上を抜けていった。両チーム通じて初の長打となったが、一塁走者津幡君はアクシデントの後だったが懸命に走り抜けてついにホームイン。さらに、2四球などで二死満塁となったが、ここで都立昭和は好投の澤田君を諦めて1年生でエースナンバーを背負う猪野君を投入。猪野君は、度胸よく三振を奪った。「結果論ですが、初安打されたところで投手交代ということもあったかもしれません。4番に対しては、敬遠もありかなとも考えたのですが…2ボールになってしまってストライクを取りに行ったところを打たれました」と、都立昭和の森 勇二監督は9回の守りに関しては、やや迷いがあったことを悔いた。
それでも、その裏の都立昭和は一死から上野君が中前打し、バントで二死二塁とすると捕逸で三塁へ進む。関口君は四球で出塁し、二塁盗塁も決めて二死二三塁。一打逆転という場面になった。ここで、八回戎らリリーフしていた岡田君は大きく深呼吸してから猪野君と対し、最後は右飛に打ち取った。試合終了となった。
江里口監督は、「このまま(ノーヒットノーランを)やられるのではないかと思っていました。みんな、のんびりした子が多いですからね(苦笑)。ウチとしては、3番と4番しか打てませんから、可能性としてはこれしかないという勝ち方ですね。本当によく打ってくれました。投手もよく頑張りましたね」と、選手たちの踏ん張り、頑張りを称えた。
最後まで本塁が遠かった都立昭和。森監督は、「悔しいなぁ…」と一言。そして、「このチームは、まだ人に頼ってしまうところが多々あるんですよ、そういうところが今日も出てしまったのかもしれません。気配りや、もっと周囲に目を配るということがまだまだできていないですね。それを、これから1年かけて植え付けていかないと…、もっといいチームにはなれません。まだまだ指示待ちのところがありますから」と、敗戦を糧に次のステップへ向けて切り替えていた。
(文・写真=手束 仁)
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