伊予vs内子
進化し続ける「伊予エキスプレス」西川 泰生
8回73球8奪三振1四球で無安打無得点の伊予・西川 泰生(2年)
「前回の済美平成戦も6回まで完全試合であることを安打を許した試合後に知って。今回はさすがに意識したら8回裏二死からコールド勝ち。持っていないです」
3安打3打点、本来ならヒーローのはずの伊予4番・西岡 大地(1年・遊撃手・168センチ60キロ・右投右打・えひめ西リトルシニア出身)を見やりながら冗談めかして笑うのは伊予のエース・西川 泰生(2年・投手・右投右打・178センチ77キロ・松山市立南第二中出身)。とはいえ、今回の結果は8回参考ながらノーヒットノーラン。しかもその内容は素材の高さを示した夏の愛媛大会からさらに進化していた。
まずはギアの入れ方。この内子戦では「試合の最初は6割。最後は7割」で前半は最速133キロ・後半は最速138キロ。「打たせて取る」がテーマでも8個の三振を奪った。さらに言えばこれは2回表を終えた後、1時間34分の雨天中断をはさんだもの。「夏の愛媛大会後、6週間前に出した」最速145キロが決して偶然ではないことを西川は見せつけた。
また、その愛媛大会からフォームも進化。以前は体のより近くで腕が回る振りに下半身がついていく形だったものが、下半身主導で腕の振りを支える無理のないものに。本人いわく「夏から(陸上部出身の)東 正太監督から教わった」ランジ等の陸上的下半身トレーニングが明らかに功を奏している。かつてチャイニーズ・タイペイから日本に渡り西武ライオンズで117勝。「オリエント・エキスプレス」と言われた郭 泰源投手(現:統一セブンイレブンライオンズ監督)のような快速球投手への道は順調そのものと言えるだろう。
「シュートの感覚をつかむため」ブルペン投球をマウンドにも持ち込んだサイドハンドはさすがに審判の注意により2~3球で断念したものの、自ら考えて実行に移す柔軟性にも見るべきものがある西川。県大会に向けての意気込みを聞くと「今回のようにはいかない。10割で投げるようにしたい」。いったい、10割の時にはどんな姿になるのか?「まだ全然。県大会でどうかというところ」と不敵な笑みを浮かべる指揮官の個人戦略と共に、「伊予エキスプレス」の今後が実に楽しみである。
過去には女優・片岡 礼子さんや、J1・アルビレックス新潟の左SB・前野 貴徳(愛媛FCユース出身)など各界に実力者を輩出している伊予だが、NPB入りを果たした選手は近畿大を経て1996年ドラフト2位で日本ハムファイターズ入り、1997年にばプロ初勝利で初完封の離れ業を演じた今井 圭吾投手(現:松山リトルシニア監督)が唯一。ただ、この進化が続くようであれば、今井氏以来2人目となる「伊予高卒のNPBドラフト指名」が実現する可能性は、極めて高い。
(文=寺下友徳)
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