本庄第一vs秀明英光
本庄第一、1年越しのリベンジ狙う二方を攻略し県大会進出
先発・中田 流生(本庄第一)
新人戦北部地区ベスト4で今大会シードの秀明英光と北部地区の強豪・本庄第一との一戦、先発は秀明英光・二方 陸斗、本庄第一・中田 流生と両エースが登板し試合が始まる。
二方は、目測でMAX130キロ前後の直球にスライダーを交える制球力が武器のオーソドックスな右腕だ。一方の中田もMAX130キロ前後の直球にスライダー、この日ほとんど投げなかったが、縦の変化球を交えるこちらも制球力が武器の投手であり、勝負所では気持ちを前面に出すピッチングが持ち味だ。中田はボーイズの強豪・小山ボーイズの出身で、ジャイアンツカップの登板経験もある経験豊富な投手である。当然、入学から将来を期待されていた投手でもあった。だが、旧チームでは既に1年生の時からチームの屋台骨を支えた権藤 聖人、馬場 龍大の存在があり、さらにそこに自身の怪我なども重なる。よって新チームになるまで、なかなか登板機会を与えられなかったそうだ。
この対決、実は秀明英光サイドにとって、因縁の一戦だったようだ。というのも秀明英光は、昨夏に続き、昨秋も激突し本庄第一に敗れている。その昨秋の試合、秀明英光は昨夏から登板経験のある当時1年生エースの二方が登板予定であった。だが、越谷にある二方の実家が、前日からの台風18号の影響により家が冠水する被害に遭い、試合当日家から一歩も出る事ができず球場に行けないというまさかの事態に陥る。エースを欠いた秀明英光は結局コールドで敗れている。
その1年越しの雪辱に燃える二方は、序盤から快調なピッチングで本庄第一打線に対し5回4安打無失点に抑える。
一方の中田も負けず劣らずの好投を見せ、序盤から毎回のように安打を浴びながらも要所を抑え秀明栄光に得点を与えない。
先制したのは秀明英光であった。
4回裏、この回先頭の山影 峻也が右中間への二塁打を放ち出塁すると、続く遠藤がきっちりと送り一死三塁とする。ここで、6番・宗像がセンター前タイムリーを放ち秀明英光が1点を先制する。
先制点を奪い勢いに乗る秀明英光は、5回裏にも、この回先頭の杉山 紀斗が左中間への三塁打を放ち無死三塁と絶好の追加点を奪うチャンスを掴む。続く庄司 敏希が倒れ一死三塁で3番・須藤太一を迎えた場面、秀明英光・秋山監督は須藤が打席に入る前に、「色々(作戦が)あるからな」
と伝え、彼も頷いていたそうだ。だが、頼みの須藤が初球を打ってしまいセカンドゴロに倒れる。結局後続も倒れこの回無得点で終わる。奇しくもここからゲームの潮目が変わる。
中盤まではやや劣勢だった本庄第一であるが、打線が中盤以降、三巡目を迎えた辺りから秀明英光・二方を徐々に捉え始める。
まず6回表、一死から4番・木村がレフトへソロ本塁打を放ち一振りで同点とし流れを掴む。さらに、7回表には、一死から8番・中田がショートのグラブの下を抜けるヒットを放つと、続く森 悠介の犠打に対し、今度はサードがボールを握り損ね内野安打となり一死一、二塁の逆転のチャンスを迎える。ここで1番・山本がライト前タイムリーを放ちついに本庄第一が逆転に成功する。
先発・二方 陸斗(秀明英光)
これで勢いに乗った本庄第一は、8回表にも、この回先頭の木村がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く松崎がきっちりと送り一死二塁とチャンスを作る。ここで6番・益田が左中間へ適時二塁打を放ち3対1とし、リードを2点に広げる。
だが、粘る秀明英光もその裏反撃を開始する。この回先頭の山影がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く遠藤もレフト前ヒットを放ち無死一、二塁とする。6番・宗像がきっちりと送り一死二、三塁とすると、続く賽吉も頭部へ死球を受け一死満塁と絶好の同点機を迎える。ここで、8番・二方がスクイズを決めるが、後続が倒れ1点を返すに留まる。だが、それでも裏攻めで1点差、最終回は1番からという最低限の形は作り、可能性は残した状態で最終回へとつなげる。
1点のビハインドで迎えた秀明英光は、先頭の杉山がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く庄司がきっちりと送り一死二塁とする。さらに、3番・須藤が四球を選び、一死一、二塁でこの日2安打の4番・山影というこの試合のクライマックスを迎える。
この場面、中田は大事な所でこの日初めての四球を与えてしまったこともあり、体力的にもいよいよ限界かと思われた。だが、彼にはまだ余力が残っていた。4番・山影を簡単に追い込むと、最後にこの日1球も使っていない縦の変化球を使い見事三振を奪う。これで波になった中田は続く遠藤からも三振を奪う。3対2で本庄第一が逃げ切り県大会へ駒を進めた。
まず、秀明英光だが、昨夏、昨秋のリベンジはならなかった。序盤からやや優勢に試合を進めながら、5回裏の無死三塁で1点を奪えなかったことが、結局最後まで響いた。ここで流れを失ったと言っても過言ではないであろう。7回には記録には残らないが勝負所でまずい守備も出た。二方は二ケタ安打を浴びながらも粘投で3失点にまとめていただけに、実にもったいない試合運びとなってしまった。打線は、杉山、山影、遠藤を中心とし活発であるだけに、チャンスでどう確実に得点に結びつけるか、ケースバッティングや状況判断など細かい部分だが重要な課題が浮き彫りとなった。
一方の本庄第一だが、中田はこの日やや球が高く11安打を浴びた。だが、再三のピンチを招きながらも動じず、縦の変化球を最後まで取っておく強心臓ぶりを見せた。ピンチでも笑顔で、ここという場面では吠える辺りは、フォームこそ違うが、旧チームの馬場を思い起こさせる。現状では、まだまだ直球のスピードや球威に物足りなさはあるが、既に相手を見て投球する術の部分や、闘争本能など投手において一番大切な部分が備わっており、何か底知れない不気味さと期待感を持つ投手だ。田中監督は県大会へ向けて他の投手登板の可能性も示唆したが、中田が投手陣の中心であることに違いはないであろう。
(文=南 英博)