鳴門vs盛岡大附
ビッグイニングが両校2回ずつ!勝敗を決したのは8回の鳴門の攻撃
両校ともビッグイニングを2回ずつ作ったゲームで、集中力の高さが印象に残った。鳴門が1点リードされた4回表に6番中山晶量(3年)が2ラン、1番日野洸太郎(3年)が2点タイムリー三塁打を放って5点を挙げれば、盛岡大附は5回裏、3本の単打と四死球1つずつを絡めて4点を奪うという対照的な攻め。
鳴門が3回から二番手の尾崎海晴(3年)、6回から三番手の河野竜生(3年)を繰り出す継投を見せたのに対し、盛岡大附は4回にホームランと三塁打を打たれ4点を失っても先発の続投にこだわった。
岩手大会では背番号「1」の坪田伸祐(3年)、「11」の三浦瑞樹(2年)、この日先発した「10」の井上涼平(3年)が8~22.1回投げ、さらに「18」の斎藤真輝(3年)が1回3分の1を投げている。甲子園では初戦が坪田、三浦、2回戦が斎藤、三浦、井上の継投で凌いでいるので、この鳴門戦で井上涼が投げているときは三浦、坪田、斎藤がベンチにいた。もっと早い継投があってもよかったと思う。
勝敗を決したのは7回まで6対5でリードした鳴門が8回に見せた二死走者なしからの攻撃だ。4回に三塁打を打っている1番日野がここでもソロホームランを放って盛岡大附に2点差をつけるのだ。
三塁打を放ったときはノーステップの無反動で打っていたが、これは反動をつけることで生まれる体のブレをできるだけ抑えたいという思いがあったからだろう。反動をつけないので飛距離は生まれないはずだが、この日はイニング後半に強い浜風がライトからレフトに吹き、レフト方向の打球は伸びていた。この打球も風に乗ってぐんぐん伸び、レフトスタンドに飛び込んでしまった。
このときのマウンドにいた三浦は続く2番鎌田航平(3年)に四球を与えているように明らかに落胆していた。4回に逆転2ランを打たれた井上涼も被弾のあと7番打者に四球を与えているが、継投のポイントはいずれもここだったと思う。しかし、盛岡大附は続投を指示し、結果的に傷口を広めてしまった。
8回に7対5としたあと、二死一、二塁の場面で打席に立った4番手束海斗(3年)のことも書いておきたい。172センチ、81キロの体格を見てわかるようにドカベン体型。今のプロ野球選手なら中村 剛也(西武)体型といったほうがわかりやすい。体型だけでなく、手束はバッティングの形そのものが中村によく似ていた。
ゆったりと脱力して打席に立ち、グリップの位置を低くして構えるというのが基本形。中村はこのグリップ位置のまま動かずレベルスイングでボールを打ち抜くが、手束は打つ前にグリップ位置を肩まで上げ、ダウンスイングでボールを叩く。その違いは大きいが、全体の形や体型は驚くほど似ていて、打球にも共通する強さがある。この手束が三浦の108キロのカーブをとらえてあわやホームランかというセンターフェンス近くまで運ぶ二塁打を放ち2点を追加、ここで勝負は決まった。
(文=小関 順二)
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