常総学院vs履正社
常総学院、履正社のゲームプランを崩す速攻劇で完勝!
完全に履正社サイドのゲームプランが崩れた試合であった。履正社の先発マウンドに登ったのは山口裕次郎。最速146キロを計測する剛腕左腕。大阪大会では24イニングを投げて32奪三振。3失点とまさにダブルエースに相応しい活躍を見せている。その山口だが、立ち上がりに難があり、走者を抱えていても、140キロ中盤の速球で押し切って無失点に抑えてから尻上がりに調子を上げていくのが山口のスタイルだ。常総学院はまさに山口の出鼻をくじく攻撃であった。
1回表、二死一、二塁から清水 風馬が右中間を破る適時二塁打で二者生還し、2対0を先制。さらに2回表にも、一死一、二塁の場面のチャンスを作り、履正社はエース・寺島成輝が登板したが、有村 恒汰が右中間を破る適時三塁打で、2点を追加。さらに陶山 勇軌の適時打で5対0と点差を広げたのであった。
常総学院は履正社投手陣を叩くとしたら序盤しかないと一気に攻めた。履正社サイドとして、疲労が見える寺島の先発回避をさせて、山口を先発にもっていくのでは戦略上、全く問題ない。ただ初登板で常総学院相手はかなり苦しかったと考えられる。寺島も勢い付いた常総学院打線を止めることはできなかった。
2回裏、履正社はエース・寺島の適時打で1点を返すが、5回表、常総学院はワイルドピッチやスクイズで2点を追加し、7対1と点差を広げた。前半は自慢の強打で5点を入れて、5回には犠打を駆使して追加点と戦い方が幅広く、嫌らしい。投げる寺島からすれば、この夏では一番嫌らしさ、強さを感じた試合だったのではないだろうか。
だがこのままでは終わらないのが寺島。尻上がりに調子を上げていく。左腕から投げ込む直球は135キロ~140キロ前後だったのが、130キロ後半~143キロまで計測。力のあるストレートも多くなり、ストレートに対応していた常総学院打線も差し込まれるほど。また130キロ前後のカットボール、130キロ前半のフォークボール、110キロ台のカーブ、120キロ台のチェンジアップを投げ分けながら、6回以降の4イニング。四者連続三振含む6奪三振を記録するなど、しっかりと立て直していった。エースがこれほど勢いをもたらせる投球をすれば、打線も勢い付く。
しかし常総学院のエース・鈴木昭汰がかなり粘り強かった。ここまで2試合を比べると今日の鈴木はどんな形でもいいからアウトになればいいやというぐらい落ち着いた投球を見せる。球速は135キロ前後が殆ど。カットボールを投げたり、そしてあまり見られなかったシュートも投げていた。鈴木をドラフト候補として注目していたのは、総合力の高さだけではなく、左打者にとって脅威となるシュートを投げられるからだ。鈴木はポイントとなる試合でシュートを使って抑えている。大事な試合で、しっかりと武器にできるところが彼の強み。この試合、奪三振は0だったが、ゴロアウトを多く稼いだ。打たせて取る投球に徹し、履正社打線を4失点にとどめ、準々決勝進出を決めたのであった。
常総学院は1番~9番まで個性的な打者が揃い、ただ強打だけではなく、スクイズ、エンドランを使ったりと攻撃のバリエーションが多彩。3年ぶりのベスト8だが、当時と比べても、遜色ないチームが出来上がり、全国制覇も狙えるチームとなってきた。履正社を破ったのは偶然でもなく、チーム力が上回って勝ち取った勝利だ。
敗れた履正社は、大阪大会から強豪と当たることが多く、苦しい試合が多かった。ゲームでいえば、スタートからハードな設定をしているぐらい、強い相手ばかりであった。それでも勝ち進むごとに地力を付けていった。3回戦敗退で終わったが、彼らの強さは出場校の中でも最も際立っていた。
横浜、履正社と今大会の本命と見られていた2校が準々決勝の前に姿を消すことになったが、波乱という感じはしない。それだけ今年はどの学校も実力が高く、優勝をしていてもおかしくない戦力を持ったチームばかりなのである。
今後、どんなゲームが生まれるのか。ますます楽しみになってきた。
(文=河嶋宗一)
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