常総学院vs中京
強力打線を上回った試合巧者
16安打12得点。
1回戦の大分戦で爆発した中京打線がこの日も初回から火を吹いた。
先発・古田 星投(2年)が2奪三振の立ち上がりを見せると、打線は1番・渡辺 豪(3年)がいきなり二塁打を放つ。
リードが大きくなったところで常総学院の強肩捕手・清水風馬(3年)に刺されてしまうが、2番・加藤 壮太(3年)は際どいコースもきっちり見極めて一塁へ歩く。さらに前の試合で4安打6打点と大活躍した北川 竜之介(3年)がライト前に弾き返すと、高校通算68本塁打の4番・今井 順之助(3年)の打球は投手強襲の適時打。さらに吉位翔伍(3年)も四球を選び一死満塁とチャンスを作り、平 秀匡(3年)の内野ゴロの間に1点を追加した。
平 秀匡(3年)の打球は常総学院のファースト・宮里 豊汰(2年)が好捕したが抜けていてもおかしくないほどの当たり。スタメン9人中7人が左打者という布陣にもかかわらず大会屈指の好左腕・鈴木 昭汰(3年)に強烈な先制パンチを浴びせた。
追う展開となった常総学院だが、2回からは試合巧者ぶりを発揮し、前半で逆転に成功する。2回に1点を返すと、3回先頭の9番・鈴木海斗(3年)が安打で出塁し、バントも考えられる場面で盗塁を決める。1番・陶山 勇軌(2年)がセカンドゴロを打ち走者を三塁に進めると、2番・有村 恒汰(3年)が飛距離十分の飛球をライトに放つ。安打1本で試合を振り出しに戻すと5回にはバント攻撃がハマる。
一死から鈴木海の試みたセーフティバントは惜しくもファールとなったが、うまく合わせて打球を左中間に運ぶと俊足を飛ばして一気に二塁へ。陶山が三塁線にセーフティバントを決め一、三塁とすると前の打席で同点の犠牲フライを放った有村が今度は初球にセーフティスクイズ。ピッチャーでは届かない、打球を処理したファーストは本塁送球を諦めるしかない完璧なバントを転がし勝ち越しに成功。ダイヤモンドの中で躍動する野球でリードを広げると、6回にも加点する。
先頭・花輪 直輝(3年)が安打を放つと清水がフルカウントからバントを決め、花輪を二塁に送る。一死二塁で左打者の鈴木昭に打順が回ったところで中京の橋本哲也監督は先発・古田から左腕の小鶴純貴(2年)にスイッチ。
しかし小鶴が四球を与えてしまい、打席に右打者の宮里を迎えると背番号1の岩川奎司(3年)がマウンドへ。死球で塁が埋まると常総学院のキャプテン・中村迅(3年)の打球は前進守備の三遊間を抜け、レフト前へ。2点を加え中京を突き放すと、7回にも清水、鈴木昭に連続適時二塁打が飛び出す。
中京は最高の立ち上がりを見せた先発・古田が6回途中まで粘投を続け、終盤には4人の投手をマウンドに送ったが、攻撃につなげる三者凡退のイニングを作れなかった。
5点をリードした常総学院はエース・鈴木昭に代打を送る余裕も見せ、最後は右サイドスローから140キロのストレートを投げ込む倉田 希(3年)が走者を2人出すも無失点で締めて試合終了。
三者凡退と2得点、初回が終わった段階では中京に分があるかと思われたが、その後はバントや進塁打を絡めた常総学院が試合の主導権を握った。中京からすれば”力負け”した感じは無いはずだがスコア上では5点差がついていた。10安打で8得点。試合巧者・常総学院が、強力打線を売りとする中京を飲み込んだ。
(文=小中 翔太)
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