鳴門vs智辯学園
打っても、守っても選抜覇者・智辯学園を上回った鳴門
鳴門が選抜覇者・智辯学園を破った。この試合、夏はすべて鍛えらなければ勝てないということを示した良い試合であった。
まず鳴門が良かったのは、智辯学園のエース・村上頌樹をしっかりと追い込むほどの打力が全体にあった。
手元以上にキレのある村上の1ストレートに対し、しっかりとミートをしていると。この試合、8安打を放った鳴門打線。村上の出来は決して悪くなく、常時140キロ~143キロのストレートを高低、内外角へ投げ分け、スライダーやカーブの使い分けは本当に上手く、まさに好投手と呼ぶべきストレートであった。
しかしそんな村上のストレートに振り負けしない。
特に8番渡辺 裕哉は2回表、ストレートを捉え、右中間を破る二塁打を打つと、第2打席となった5回表には、これもストレートを打って右前安打。まず1点のホームを踏むと、第3打席には右中間を破る三塁打を打ったのだ。渡邊のスイングを見ているとスイングは非常に速く、本当に8番打者なのか?と思うぐらい速かった。
そして6回表、同点打を放った矢竹 将弥も投げても140キロを誇る、強肩と守備範囲の広さがウリの外野手だが、1つ1つの打球が鋭い。開幕戦で本塁打を放った手束海斗だけではなく、下位打線にも村上頌樹を打てる打者がいるということが智辯学園を追い詰めたのかもしれない。
投げてはエース・河野竜生が、140キロ前後のストレートとスライダー、カーブをテンポよく投げることができていた。変化球が低めに決まったり、要所ではストレートで押したりと攻める気持ちを大事にしながらも、うまく智辯学園を交わしていったのだ。ポジションニングも良く、深いフライも、アウトにできていたりと、智辯学園のペースにさせなかった。
そして9回表、二死満塁のチャンスを作り、2番鎌田の適時打と智辯学園の守備の乱れが出て、一気に3点を勝ち越した。じっくりと試合運びをして、最後に突き放す。これは打撃、守備力も両方兼ね備えているチームができる芸当である。
夏は打てないと勝てない。確かにその通りだが、それだけではない。どこで打って畳みかけるのか、ここはしっかりと守るというポイントが分かっているチームが強い。
スローイングができないチーム、基本的な処理ができないチームはやはり早々と敗れる。鳴門の野球を見ると、1年間で試行錯誤を経て、攻守ともにバランスが取れたチームを作り上げたというのが伺える。そこに夏を勝つ難しさも同時に感じさせる。
投球面、打撃面、守備面、すべてにおいて上回っていた。お見事な野球だった。
(文=河嶋宗一)
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