木更津総合vs唐津商
木更津総合・早川、完璧な投球で唐津商に完封勝利!
後半戦の第7日目ともなると、これまでに好投手、好野手と騒がれた選手がひと通り登場し、ニュースになっている。第3試合に登場する創志学園の右腕、高田 萌生(3年)にしても、この試合に先発する木更津総合の左腕、早川 隆久(3年)にしても心穏やかではなかっただろう。そういうモヤモヤを晴らすような快投だった。
早川が「俺のよさをみせてやる」といきみ立っていたわけではない。そういうピッチングスタイルではないのだ。まず投球フォームが尋常でないくらい完璧で、美しい。これまでに紹介した寺島 成輝(履正社)には下半身が上半身を引っ張る形が完璧でないと書き、藤平 尚真(横浜)には投げにいく直前に上体がスーッと伸び上がる悪癖を指摘した。しかし、早川にはわずかな欠点も指摘できない。
投げ始めから投げた球がキャッチャーミットに収まるまでのタイムは2秒以上。これは打者の打ち気を見ながらタイミングを微妙にずらせるフォームということ。ストレートのこの日の最速は143キロで、本人がその気ならあと2、3キロはすぐにでも出せるだろう。いきみ立つ要素がありながら、そういうものをしっかり押さえ込んで自分の持ち味をしっかりと出す、そういう部分に精神力の高さを感じた。
変化球はカーブ、スライダーが絶品で、ともに余計な横ブレがなく斜めから縦に切れ込んでくる超高校級の球筋。これにチェンジアップらしき落ちる球があり、これらを駆使して緩急をつけて、さらに内角を攻めることができる。つまりストレートを添え物にしてもピッチングをすることができる。それくらい技巧派としての精度が高い。それでもキレのいいストレートを加えて、一切のスキを封じているという印象なのだ。
唐津商打線は攻略のためにできるだけのことはしたと思う。私が俊足の目安にする打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは3人4回。バッテリーを含めた内野陣を揺さぶろうという意図ははっきり見えた。しかし、木更津総合の内野陣はそれに惑わされず守り切った。
木更津総合の課題は打線である。2回裏に4安打を集めて2点取った以外はゼロ行進が続いた。唐津商の先発、谷口 優成(3年)の変則投法に戸惑ったという面はあるだろう。テークバックを終えて投げに行く直前、上体がしゃっくりをしたときのように痙攣する。この動きがタイミングを合わせることを困難にさせた。
しかし、木更津総合打線の問題もある。8回を完投した谷口の102球という球数を見れば、術中にはまったという見方ができるが、早打ちなのにストライクの見逃しは20球もあり、見逃し率は17.4パーセントと高め。つまり積極的に打って出たのではなく、何となくボールを見逃して追い込まれてから凡打を重ねたということが、これらの数字を見ると想像できるのである。
(文=小関順二)
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