試合レポート

聖光学院vsクラーク記念国際

2016.08.12

勝負勘の良さを見せ付けた小泉徹平!

 敗れたとはいえ、聖光学院を見事に追い込んだ初出場のクラーク記念国際。そのクラーク記念国際に勢いをもたらしたのは。背番号6のエース・平沢津 虎揮だ。本当に嫌らしい右サイドであった。ストレートは常時133キロ~136キロと突出して速くないのだが、アンダー気味で投げるため、手元でぐっと伸びのある球を投げ込んでくる。聖光学院打線の破壊力は全国クラスなのだが、そんな聖光学院打線が平沢津のストレートに差し込まれ、ボールの下をこするような当たりが多かった。それだけ平沢津のストレートが手元で来ているということである。

 さらに強烈なインステップから投げ込んでいくので、打者から三塁側から来るような感覚で来るだろう。115キロ前後のスライダーが急激に曲がってくるので、明らかにボール球に見えても、空振りをしていた。ストレートは高めのつり球で勝負するなど、思い通りの投球ができていた。

 そして打っても、活躍を見せる。1回裏、左中間を破る二塁打を打つと、4番安田 世幸の適時打で1点を先制。2回表、失策で同点に許すが、3回裏、再び3番平沢津が右中間を破る三塁打、そして4番安田の適時打で2対1と勝ち越しに成功。さらに5回裏には、浜本 大地の適時二塁打で3対1と点差を広げた。平沢津の投球はますます冴え、7回まで1失点に抑える力投。野手を務めるが将来性は間違いなく投手だろう。

 ここまで健闘を見せる初出場のクラーク記念国際に対し、スタンドの雰囲気はクラークを後押しし、また、クラーク記念国際の応援部隊だった環太平洋大のマーチングバンド部が演奏する壮大な音楽により、選手たちを後押しし、聖光学院を追い込んでいたのだ。


 だが聖光学院はこのままでは終わらない。

 8回表、先頭打者が死球で出塁すると、たちまち無死満塁のチャンスを作る。ここでざわざわとした雰囲気となって迎えたのは5番小泉徹平。小泉は初球を打って左中間を破る適時三塁打を放って逆転に成功。さらに犠飛で1点を追加し、5対3とした聖光学院。勝負所を見逃さず、一気に畳みかける怖さは健在で、改めて聖光学院の底力を見せてくれた。その聖光学院を目覚めさせたのはクラーク記念国際の勢いある戦いぶりがあったと思う。このままでは敗れてしまう。そこに聖光学院の選手たちが危機感を覚え、逆転に成功したのだ。

 投げては2番手の斎藤郁也(2年)が右上手から常時135キロ~140キロの直球でどんどん勝負し、120キロ前後のスライダーを交えてクラーク記念国際打線を抑えて、3回戦進出を決めた。この斎藤の力投が大きいだろう。まだ2年生ということで、今後の成長を期待したい2年生右腕だった。

 この日の殊勲者はやはり小泉 徹平であろう。

 今まで安打も出ていなかったが、この場面で、初球を見逃さず、打てる勝負強さ、度胸の強さはやはり恐れいる。1年生の時から小泉のバットコントロールに惹かれ、今年の東北大会では、細身ながらも強い打球を飛ばす姿を見せていた小泉。ここまでの打席、あまり芯で捉えることができていなかったが、この打席に限っては、インサイドアウトでしっかりと振り抜くことができていた。これからも決勝打を打った打席のように右中間にも、左中間にも強い打球を打てるようになれば、もっと目を惹く存在になるだろう。更に一発を打つ打球を感覚を覚えれば杉崎成輝(現・東海大)クラスの野手に成長する可能性は十二分に秘めている。

 二塁や遊撃の守備は、「切り返し」や「捕ってから投げるまでの動作」が素早く、守備範囲はとにかく広い。9回裏にはダイビングキャッチしてからすぐに起き上がって投げたが、体勢を崩さず、投げるところを見ると、体幹の強さを感じる。ただこの日は1失策。失策した内容を見ると、バウンドの合わせ方が課題だろうか。もう少し体の中心でボールを裁く感覚を覚えると、安定感はより増していくはずだ。

 それでもヒット性の当たりをポジショニングの良さで、追いついてアウトにしたりと、ファインプレーが多い。高校2年生なのだが、一歩先のプレーができている。

 この世代、スラッガータイプの野手は非常に多いのだが、小泉のようなセンスあふれる二塁手はとても貴重な存在。勝負勘の良さを持った選手であり、来年のU-18代表を目指して取り組んでほしい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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