日南学園vs八王子
両キャッチャーが光った日南学園vs八王子!「ありんこ軍団」初勝利ならず
両校とも飛び抜けた選手がおらず、総合力で勝ち上がったチームと紹介されている。とくに八王子はクリーンアップのうち2人が西東京大会では打率2割台と平均的で、エース・早乙女 大輝(2年)の36被安打は投球回(31回3分の1の)を越えている。
一塁側アルプススタンドの横断幕には「ありんこ軍団」の文字が堂々と踊っている。強くはありません、しかし、まめに動いて相手チームをかく乱します、そんなメッセージが込められていそうだ。
日南学園のエース・森山 弦暉(3年)も早乙女と同型の技巧派左腕だ。160センチの上背でわかるようにストレートに速さはなく、横変化のスライダーと逆方向のチェンジアップを交えた左右の攻めに特徴がある。
選手のパフォーマンスを中心に観戦記を書く私のような物書きは何を書いたらいいのだろう……正直にいうとしばらく悩んだ。しかし、イニングを追ううちに安心した。両校のキャッチャーがよかったのだ。
日南学園の萩原 哲(3年)は私が計測したイニング間の二塁送球で最速1.90秒を計測し、1回は二盗を阻止する1.97秒を計測した。このクラスの強肩は今大会では常総学院・清水 風馬、智弁学園・岡沢 智基に匹敵する。
八王子の細野 悠(3年)もイニング間で1.93秒、実戦で1.95秒(二盗刺)を計測した。地肩の強い萩原に対して捕ってからの早い送球動作に特徴があり、プロのタイプでは城島 健司(元阪神タイガース)が近い。リードは萩原が外角主体でありながら時折打者をのけ反らす内角球を要求し、萩原はあくまでもリスクヘッジ型の外角主体で、結果を見れば萩原の配球のほうが功を奏した。
八王子は6回表、前のイニングに失点した早乙女に代えて米原 大地(2年)をリリーフに送った。左右の揺さぶりが功を奏していたので降板は早いと思ったが、後の祭り。ストレートが最速141キロを計測してもボールが先行すればストライクがほしくなるのは野球のイロハ。甘いコースに入った球をことごとく捉えられ、打者13人に対して6本の長短打をつらねられ、6失点で沈没した。
日南学園ではショート・石嶋 友翔(3年)の守りがマウンドの森山をずいぶん助けた。八王子が記録したショートゴロは何と11個。それを丁寧にさばいてすべてアウトにした。攻撃では5回表に無死一塁の場面で打席に立って4回ヒットエンドランを試み、最後に成功させて、次打者の併殺崩れで先行した。森山、萩原とともに勝利の立役者と言っていい。
(文=小関順二)
注目記事
・第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ