試合レポート

広島新庄vs関東一

2016.08.10

技巧派・佐藤奨vs本格派・堀!延長戦を制した広島新庄が勝利!

 今大会で最初の投手戦は広島新庄堀 瑞輝(3年)と関東一佐藤 奨真(3年)の両左腕が持ち味を十分に発揮した。

 佐藤 奨はストレートの最速が130キロ台中盤という技巧派だが、90キロ台のスローカーブを効果的に織り交ぜながら110キロ台のスライダーや中盤から投げ始めたチェンジアップを主体に打者を幻惑。10回途中でマウンドを降りるまでの9回3分の1を、被安打5、奪三振9でまとめ上げた。

 対する堀は高校野球の尺度で言えば本格派と言っていい。ストレートは最速144キロを計測し、スピードがイニング後半に入ってもまったく落ちない。ちなみに、延長12回にはストレートが143キロを計測している。

 この本格派を「高校野球の尺度では」などと面倒くさい言い方をしたのは、ゆくゆくはプロのマウンドを踏む投手だと思ったからだ。そして、プロに入ったら「技巧派」、あるいは「腕を下げた変則左腕」という言い方をされると思う。

 技巧派だから魅力がないということはない。投げる形はスリークォーター。序盤にストレートが右打者の外角方向に抜けたのはステップ幅の狭さに力みが加わったからだが、イニングを経るごとに抜け球は少なくなり、関東一のスターティングメンバーに6人並ぶ右打者の内角をえぐるスライダーと逆方向に変化するチェンジアップを効果的に混ぜ込み、ピッチングを単調にしなかった。

 この堀から2安打したのが関東一の5番石橋 康太(1年)だ。昨年、社会人野球の全国大会、都市対抗のエキジビションで中学生のリトルシニアとボーイズリーグのピックアップチームの試合が行われたが、ここでリトルシニアのスタメンでキャッチャーだったのが石橋。詳しい数字は覚えていないが、実戦で二盗を阻止する二塁送球を見せ、このときのタイムが1.9秒台。プロでも簡単でないタイムを中学生が計測したことに非常に驚かされた。

 この日は一塁手として5番に入り、第1打席で堀の142キロストレートをセンター前に弾き返している。第2打席は警戒されたのかすべてスライダーという配球で死球、第3打席は5球のうちスライダー、チェンジアップが3球、ストレートが2球という徹底警戒の配球となり、142キロのストレートをライト前に弾き返し、あまりにも打球が強かったため二塁走者がホームで憤死するという結果を招いてしまった。この石橋を延長になりそうな試合展開の9回、どうしてベンチに下げたのだろうか。

 左腕同士の屈指の投手戦は1対1のまま延長戦に突入、関東一佐藤奨から本格派右腕の竹井 丈人(3年)に代わり、竹井は最速143キロのストレートを主体にしたピッチングで広島新庄の打線をよく抑えた。延長12回表、この竹井が制球を乱し、1死からヒットと2つの四球で満塁となり、3番北谷 奨吾(3年)がセンターに犠牲フライを放ち、広島新庄に待望の1点が加わった。

 12回裏は堀のワンマンショーになった。7番をショートゴロに打ち取ったあと、8番を140キロのストレートで、9番を143キロのストレートで連続空振りの三振に切って取り2時間42分に及ぶ熱戦に幕を下ろすのである。

(文=小関 順二

広島新庄vs関東一 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!