いなべ総合vs鶴岡東
山形大会7本塁打の鶴岡東打線を3失点に封じたいなべ総合の確かな守備力
山形大会7本塁打の鶴岡東打線が3失点に抑えられた。3失点に抑えたいなべ総合の投手陣は強力投手陣なのか?と思ってしまうだろう。だがいなべ総合の山内智貴は、130キロ~130キロ前半の投手。スライダー、カーブ、チェンジアップを巧みに投げ分ける投手だ。彼以上の速球を投げる投手を甲子園で見たが、それでもスコン、スコンと振り抜かれる姿を見ると、スピードとは何だろうと思う時がある。もちろん投手にとってスピードは大事なのだが、山内がなぜ鶴岡東打線を打ち取れる投手なのかと考えた時、変化球を手元で変化させることができる投手だと考えられる。
ストレートのスピードとそれほど変わらないスライダー。打者の手元で鋭く落ちるスプリット。そして低めだけではなく、高めのつり球もしっかりと使っている。これがピッチングなんだなと気付かされる。
やはり基本であるバックの守備がしっかりしているからといえる。今回、大量失点しているチームの投手が大きく見劣りする内容であるかというとそうでもなく、勿体ないミスが大事な場面で出てしまう。それが積み重ねって、大量失点してしまうのだ。
いなべ総合の守備を見ると、球際の強さを感じる。際どいゴロに対して難なく処理をしている。また鶴岡東の各打者は非常に鋭く、処理するのは難しい打球は結構多いのだが、これをしっかりと捕球し、そして送球する。また一塁手も難しいショートバウンドを華麗なグラブ裁きでアウトにする。
1つのアウトを当たり前に取る。これを実践するのは簡単なようで難しい。実は他の試合を見ていると、1つのアウトを当たり前に取るための高度な野球をやっているということに気づかされる。
いなべ総合は、一発長打を打つ選手は少ないが、各選手がシャープなスイングを心掛けるだけではなく、詰まることを恐れず、またセーフティスクイズを織り交ぜたりと、硬軟自在な攻撃を演じた。
鶴岡東では2番手の吉住晴斗(2年)は良かった。左足を高々を上げてから、テークバックを大きく取って鋭く腕を振って投げ込む直球は常時135キロ~140キロを計測していた。ほぼ直球中心の投球であった。最速は145キロを計測する投手であり、このままいけばドラフト候補投手として注目されるだろう。投球スタイルを見ると、低めに押さえ込むというよりも、直球と縦の変化球で高低の変化を付けた方が良い投手だろう。縦の変化球をしっかりとマスターすると、もっと化けそうな予感をさせる投手であった。
(文=河嶋宗一)
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