履正社vs高川学園
11奪三振完投も…高校生ナンバーワン左腕・寺島成輝の課題とは?
大会ナンバーワン左腕と評判の高い履正社の先発・寺島 成輝(3年)が2安打、1失点完投で幸先いいスタートを切った。自己最速149キロのストレートは146キロ止まりだが、ここぞというときのストレートの威力は超高校級の名に恥じないものだった。コンスタントに速いわけではない。カウントを取るストレートは130キロ台中盤から後半が多く、追い込むととたんに腕が振れはじめ、球速も140キロ台中盤から後半を計測する。
変化球もいい。スライダーは縦・斜めを使い分け、さらに縦割れカーブに小さく落ちるチェンジアップと多彩で、いずれも勝負球で使える精度を備える。ただ、追い込んでからはストレートが多く、11奪三振のうちストレートで奪ったのは10個。残り1個がスライダーなので、勝負球はほとんどストレートと言っていい。
この試合に比べデキがよくなかったと思われる近畿大会では、下半身より上半身の強さが目立った。ステップする下半身に誘導されるように上半身が遅れて出ていくのが理想的だが、近畿大会ではステップする下半身を上半身がすぐ追いかけていた。この高川学園戦はというと、ステップして時間差で上半身がついていく流れができていた。ひとまず安心したが、高川学園の先発・山野 太一(3年)とくらべるとステップ以降の流れがまだ性急。山野は捨てする右足がグーッと伸びてからゆったりと上半身がついていく。寺島はまだまだフォームに粘りがないと思った。
寺島ほど前評判が高くない山野のほうが「下半身から上半身」の流れが完璧にできていた。上背は167センチと小柄だが、名簿を見るまでそれと気がつかなかった。当たり前に176センチくらいあると思っていた。オーソドックスなオーバースローで、始動から投げたボールがキャッチャーミットに収まるまでの投球タイムは2.3秒程度。寺島が1.8秒程度なのでその差は0.5秒。その差が投球フォームの粘りと言っていい。
山野のこの日のストレートの最速は142キロ。縦に割れるスライダーのキレもよく130キロ台中盤のカットボールもよくキレる。しかし、超高校級の破壊力を秘める履正社打線はこの山野の直曲球を苦にせず、とくにストレートはよく打った。
2回裏に打者8人を送る猛攻で勝負は決まったのだが、1番・福田 観大(3年)は1対0の場面でレフトへ三塁打を放ち、このときの三塁到達は俊足と言っていい11.19秒。打球の強さでは4番・安田 尚憲(2年)が規格外で、7回の二塁打は打球が途中からグーンと伸びるような迫力でセンターの頭を越えていき、ダメ押しの走者を迎え入れた。
(文=小関 順二)
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