試合レポート

花咲徳栄vs聖望学園

2016.07.27

花咲徳栄の高橋昴也が防御率0.00で甲子園に乗り込む!

 “何か今大会は高橋昴也(3年)の高橋昴也による高橋昴也のための埼玉大会”そう言ってもいいほどの今大会の彼のピッチングは圧巻であった。

 高橋(昴)を擁し、走攻守のバランスの良い花咲徳栄対主砲・大野亮太(3年)を中心とした打のチーム聖望学園の決勝戦、共に強豪ながら意外にも夏は歴史上一度しか当たったことがない。しかも、東北福祉大の先輩後輩関係にある岡本、岩井両監督が就任してから夏は初対決となる。もちろん、高橋(昴)と大野の対決もそうだが、高橋(昴)に対し、聖望学園打線がどのように攻略していくかがポイントとなったが、結果的には高橋(昴)が全てにおいて聖望学園打線を上回ってみせた。

 花咲徳栄が高橋(昴)、聖望学園中川航(3年)と両エースが先発したこの試合、聖望学園はこの日6番に蛭田真成(3年)を入れた以外は両チーム準決勝と同じ布陣で試合が始まる。

 初回、花咲徳栄は中川の立ち上がりを攻め、先頭の千丸剛(2年)がセンター前ヒットで出塁するが、続く高橋哉貴(3年)はうまく送れず一死を与えるが、続く岡崎大輔(3年)に対しても花咲徳栄ベンチは犠打のサインを出す。これを岡崎がきっちりと決め二死二塁とする。この辺りは花咲徳栄の決勝を戦う上での手堅さを感じた。ここで、4番・西川愛也(2年)がインコースの直球を捉えると打球はライトスタンド上段へ飛び込む先制2ランとなる。

 この先制点は、両チームにとって非常に大きかった。花咲徳栄は高橋(昴)が過密日程で投げ続けているだけに終盤ややスタミナ面で不安が残る。だが、序盤でリードをもらうと高橋(昴)も初回から全力投球ということもなく、メリハリをつけて投げることができるだけに大きい。一方の聖望学園花咲徳栄が今大会リードを許した展開をまだ一回も戦ったことがない。相手の焦りを誘うことができ、そうするとボールが動く中川のピッチングが活きてくる。

 一回終了後、早速岡本監督がキャッチャー大野とかなり長い時間話し込む。おそらく、インコースの直球を2球続けてしまった西川に対する配球の事であろう。それだけ聖望学園は早い段階で先制点を与えたくなかったということであろう。


 これで試合の流れを掴んだ花咲徳栄は、3回表にも、二死から3番・岡崎がセンター前ヒットで出塁すると、続く西川が四球を選び二死一、二塁とする。ここで聖望学園・中川がボークを犯し二死二、三塁とすると、ここで5番・楠本晃希(3年)がセカンドへタイムリー内野安打を放ち1点を追加する。

 一方の聖望学園はここで心配していた守備でミスが出る。

 花咲徳栄は4回表、一死から7番・西銘築(3年)のファーストゴロをファーストがファンブルし(記録は強襲ヒット)カバーに入ったセカンドも一塁への悪送球を放る。続く高橋(昴)がきっちりと送り二死二塁とすると、ここで9番・野本真康(3年)はショートゴロを放つが、今度はショートが一塁へ悪送球を放り4点差がついてしまう。

 ゲーム終盤になると何か勝敗よりも焦点は聖望が1点を奪えるかどうかという会場の雰囲気になる。

 花咲徳栄は、8回表にも再登板した中川から6番・山本優也(3年)の三塁線を破るヒットを皮切りに、8番・野本がライト前タイムリーを放ち1点を追加すると、9回表にも、5番手・水谷憲正(3年)から二死二塁で4番・西川がセンター前タイムリーを放ち、6対0とし試合の大勢は決した。


 6点のビハインドで迎えた最終回、これまで二塁も踏めずにいた聖望学園が意地を見せる。二死後、打席には4番・大野が入る。大野は直球をとらえセンター越えの三塁打を放つ。だが、続く丸井頼智(3年)が三振に倒れ崩れ落ちる。最後まで1点が遠かった。結局、6対0で花咲徳栄が勝利し三季連続甲子園の切符を掴んだ。

 高橋はこの日明らかに疲れており、MAX143kmでアベレージも130km後半であったため奪三振は4に終わった。だが、疲れている時はそれなりの投球を見せ、結局この日も与四死球1、4安打完封と結局今大会自責点0で甲子園へ乗り込むこととなった。

 まず、聖望学園だが、とにかく先制点を奪われたのがすべてであった。序盤の失点で高橋(昴)を楽に投げさせてしまい終盤勝負に持ち込めなかったことが大きい。結果、力負けのような形になってしまった。もちろん、これまで高橋(昴)同様、初戦以外ほぼ一人で投げ抜いた中川の蓄積疲労の影響もある。この日はMAX130km前後であったが彼なりに粘る強く投げ抜いた。決勝進出の立役者である彼は責められないであろう。準決勝の時に指摘した守備面での不安も大事な所で出てしまった。打線も高橋(昴)に対し簡単に三振せず喰らいつき、最終回などは大野も含め意地も見せた。だが、あと一本が出なかった。今年は三年生が中心のチームであっただけに、新チームは一からになりそうだが、津田が中心となりこの悔しさを後輩たちへ伝えていってほしい。

 一方の花咲徳栄だが、高橋(昴)の驚異的なピッチングはもちろんだが、結局今大会失策0で終わった守備陣も立派だ。チーム打率も4割近くを誇り、足も小技も使える。その総合力でベスト8まではすべてコールドで終えたことが高橋(昴)の負担を減らし大会終盤5日で4試合の過密日程で全試合高橋(昴)先発好投という結果を引き出した。

 この辺りは決して高橋(昴)のワンマンチームではないことを証明してみせた。甲子園では、レベルがまた一段階上がる。埼玉大会の疲労が抜けず、高橋(昴)が簡単に先制を許し、四球を与えることも起こり得る。そんな時に他の選手がどうカバーできるか元々総合力が高いチームであるだけにそれが鍵となるであろう。場合によれば秋4番の隈本や春の大会でエース級の活躍をした綱脇の出番もあるかもしれない。いずれにせよ、高橋昴也がここ10年の埼玉で一番能力の高い投手であることは異論の余地がない。

 そんな彼が、甲子園でどこまで駆け上がるのか、それとも深紅の優勝旗まで持ち帰るのか。早く甲子園で見てみたい。久しぶりにそう思わせる大型投手が埼玉に現れた。

(文=南 英博

花咲徳栄vs聖望学園 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!