常葉橘vs静清
最大4点差を追いついた常葉橘、延長で勝利して東海王者の力示す
今春の県大会を制して、続く東海地区大会でも優勝を果たした常葉橘。この夏はシード校として、満を持しての登場となったが、2012(平成24)年以来の4度目の甲子園出場を目指す。ここまでは安定した戦いでベスト8に進出してきている。また、静清も静清工時代の2005(平成17)年以来の出場を目指すが、春季大会ベスト8でシード校として臨んだ大会。前日は名門静岡商を下すなどで、ここまで順当に勝ち上がってきた。
先取点は常葉橘があげた。四球で出た4番山野君が二塁盗塁を決めると、一死後伊藤 圭吾君が右前打で帰した。しかし静清もその裏、一死から杉浦君、寺崎君の連打の後、バントで進めて二死二三塁という場面で、8番横尾君が左中間へ二塁打して逆転した。
3回にも静清は無死一二塁をきちんと送った後、4番伊藤 寛太君が中越二塁打してさらに2点を追加。優位に試合を運んだ。常葉橘の谷脇君のストレートは140キロ以上をマークしていたものの、いくらか球が高く浮き気味だった。そこを静清打線に叩かれた。
何とか早い回に追いつきたい常葉橘だったが5回に四球と小林君のバント安打などで無死満塁の絶好機を迎えたものの、併殺崩れの1点のみにとどまってしまっていた。静清の横尾君が気合の入った投球で、その後を併殺で切って取ったのだ。
そしてその裏、静清は二死走者なしから連続四球と失策で1点を取り返し、さらに寺崎君の中前へのタイムリー安打も出て、さらにリードを広げた。
しかし、常葉橘も気持ちは切らしてはいなかった。6回には9番の内村君が左翼スタンドへ2ランを放って追い上げる。さらに8回にも内村君が今度は中越三塁打すると、一死後小林宗弘君がこの日自身4安打目となる中前打を放って1点差。さらに失策もあって、一死二三塁で一打逆転という場面を迎えた。ここで、常葉橘は4番山野君が右犠飛を放ってついに同点とした。最大4点差あっただけに、よく追いついたと言っていいだろう。これで試合は振り出しに戻った。試合の流れはむしろ、常葉橘に傾きかかっているとも思えた。
事実、9回は先頭の伊藤君、続く長倉君と連続安打して無死一二塁とした。しかし、ここは横尾君もよく踏ん張って、当たっている内村君を遊直併殺とするなどしてこらえた。こうして、試合は延長に突入していった。
どちらも球数もかなり投げ込んできているだけに、早く見方が援護して決着をつけたいというのが正直なところであっただろう。
延長に入って10回、1番からの好打順の常葉橘だったが簡単に一死となる。しかし、続く小林君はラッキーボーイぶりを発揮して二塁への内野安打で出塁。続く大嶋君も中前打すると、暴投もあって二三塁となる。ここで、この日4番に起用された山野君が遊撃手頭上を破る好打で2者を帰した。試合の流れからも、大きな2点が入った。
それでも、粘る静清はその裏、先頭の伊藤君が中前打で出ると、杉浦君四球で一二塁。寺崎君の右飛で一三塁となり、内野ゴロの間に三塁走者が帰って1点差とした。しかし、最後は谷脇君が渾身の力で三振を奪って、2時間56分の試合は決着がついた。
両チームともに好投手を擁しており、常葉橘の小林正具監督も静清の三島 航平監督も2~3点をめぐる攻防を予想していたはずである。ただ、それがお互いにとって想定外の展開になっていって、そんな中で粘り合いとなったが、東海大会でも決勝で県岐阜商から5点差を追いつき最後にはひっくり返した常葉橘。そんな経験値が生きたとともに、東海王者となった実力を最後に示したとも言えよう。
(文=手束 仁)
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