時習館vs日進西
時習館が伸び伸び溌剌野球で快勝
三河地区を代表するというか、もっと言えば愛知県でも屈指の進学校として知られる時習館が、逞しく「文武両道」の旧制中学校の歴史を担う学校らしさを示した戦いで快勝した。連日7時間授業で、
午後7時には全員下校ということが前提という環境の中で、限られた中でいかに効率よく練習をしていって成果をあげられるのか、その手本を示したような、そんな、伸び伸び溌剌とした時習館の試合運びだった。
時習館は2回、まずは足を絡めた巧みな攻めで先制した。
この回、一死から5番本田君が四球で出ると、続く鈴木健太君が左前打して一二塁。さらに併殺崩れで二死一三塁となると、8番河合達佑斗君の時に一塁走者河合達貴君がするすると二塁へ走りかける。捕手が送球すると見るや、三塁走者の本田君が本塁へ走って、見事な重盗を決めた。これで勢いの出た時習館はさらに河合佑君も左前打して二塁走者を迎え入れた。
3回にも時習館は先頭の1番三井君が左前打で出ると、盗塁とバントで一死三塁として3番鈴木康平君が中前打して3点目を奪った。ここまで、時習館の林哲也監督としても、まさに意図したとおりの展開での得点だったのではないだろうか。
時習館は5回にも二死一二塁から4番今川稜太良君、本多君の連続安打でさらに2点。8回には打者一巡で三井君のタイムリーや鈴木康平君の左前打に押し出しもあって3点が追加された。
意地を見せたい日進西は、その裏、何とか食い下がって二死一三塁から、代打大山君が中前打で三塁走者を帰して一矢を報いた。結局、この1点止まりで日進西は7点差を詰めきれず、コールド負けとなってしまった。それでも、最後まで何とかしていこうという姿勢は十分に示していたのではないだろうか。
第1回大会から地区大会に参加して、かつては愛知四中、豊橋中という時代に全国大会への出場も果たしている時習館。胸には、漢字で「時習」と書かれており、帽子のマークは伝統の校章。そして、肩口には戦時中の名残(当時野球が敵国スポーツということで英語の使用が禁じられ、代わりにドイツ語で表現していたことがあった)として独逸文字で豊橋中を示す「TC」という文字が残されている。そんな伝統校がベスト16に進出。古くからのファンにとっては、時習館の活躍はまた、特別な思いがあるという人も少なくないことであろう。
日進西は先発の桒江優次郎君が何とかかわそうとしていったが、2回に足でかき回されて以降、自身のリズムを失ってしまった。一方、時習館の今川和哉君は、左横手の変則気味だが、制球もよく、終始自分の投球が出来たのが大きかったであろう。
(文=手束 仁)
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