試合レポート

市立川越vs浦和学院

2016.07.19

浦和学院、三年連続公立高校に敗れる

 三回戦の坂戸戦からその予兆はあったが、まさかここで敗退とは。Aシード・優勝候補の浦和学院対スタメンに2年生が7人という若い市立川越との一戦は波乱の展開となった。

先発は浦和学院榊原 翼(3年)、市立川越が2年生左腕のメンディス 海と両エースが先発する。
浦和学院はこの試合、これまでの2試合あまり当たっていなかった9番・杉山 翔(2年)に代え酒井(3年)を入れ試合が始まる。

浦和学院は初回、立ち上がり制球が定まらないメンディスに対し、先頭の山本晃大(2年)が四球を選ぶと、続く家盛 陽介(2年)は送りバント。
だが、ピッチャー前に転がったやや強い打球に対し、フィールディングの良いメンディスが判断良く二塁へ投げ併殺とするとメンディスはその後勢いに乗る。

先制したのは、市立川越であった。
2回裏、市立川越はこの回先頭のメンディスがインコースの直球に対し、腕をうまくたたみセンター越えの打球を放つと、俊足を活かし一気に三塁を奪い無死三塁とする。
続く星野大樹(2年)がきっちりとライトへ犠飛を放ち、1点を先制する。さらに、二死から8番・武居(2年)が左中間へ二塁打を放ち二死二塁とするが、ここは榊原が踏ん張り後続を抑える。

3回裏も一死から2番・市原智也(2年)が四球を選び出塁すると、二死後4番・瀬山大輝(2年)がレフト前ヒットを放ち二死一、二塁とチャンスを作り、前の打席で三塁打を放っているメンディスを迎える。
すると、これ以上追加点をあげたくない浦和学院は早くも3回途中で5安打を浴びたエース榊原を諦め、1年生左腕・佐野涼弥へとスイッチする。佐野はこのピンチを落ち着いて抑え追加点は与えない。

その後は、佐野が鋭い変化球を中心に市立川越打線を寄せ付けないピッチングを見せる。
すると、浦和学院打線が二巡目を迎え徐々にメンディスを捉え始めるのだがなかなか噛み合わない攻撃が続く。
4回表、二死から1年生の4番・蛭間拓哉のボテボテの打球がピッチャーへの内野安打となり出塁すると、続く幸喜勇諮(3年)もライト前ヒットを放ち二死一、三塁になると思われたが、幸喜が二塁を狙い大きくオーバーランしたことで挟まれチャンスを逃す。

浦和学院は5回表もこの回先頭の前田陽太(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁する。続く榊原は鋭く大きなファールを放つが結局最後はボール球に手を出しセカンドゴロ併殺に倒れると後続も倒れ無得点に終わる。

その後、両チーム佐野とメンディスの好投もあり試合は市立川越1点リードのまま最終回を迎える。


浦和学院が最終回の攻撃を迎える前、市立川越にとって大きなアクシデントが起こる。8回裏の攻撃でランナーとして出塁したメンディスがその走塁中に足が攣り治療の甲斐なく後退を余儀なくされる。

九死に一生を得た浦和学院は、代わった二番手・早川を攻め立て、この回先頭の家盛が四球を選び無死一塁とし、諏訪賢吉(3年)を迎える。ここまで良い当たりがなかった諏訪。それだけにさすがにここは送らせるかと思われたが、ベンチは強攻を指示する。結果はサードライナーに倒れると、その後も、4番・蛭間もショートゴロ、5番・幸喜もセンターフライに倒れ万事休す。

市立川越が、優勝候補・浦和学院を1対0で下し5回戦へ駒を進めた。
市立川越はこの日はとにかくメンディスに尽きるであろう。
強打の浦和学院打線相手にも臆することなく、威力のあるインコースの直球を中心に攻め続け、縦の変化球も鋭い。この試合ほとんど連打を許さず8回5安打無失点に抑えた。打線も序盤で榊原をKOするなど、2年生が中心ながら特にひ弱さがなく粘り強い。

この日も結局、一回も三者凡退に抑えられるイニングを作らず終始押し気味に試合を進めた。5回戦以降は試合の間隔が短くなるので、メンディスの足の具合がやや気になるが、今後も彼が投打の中心となってチームを引っ張っていくことができれば、若いチームであるだけに勢いに乗る可能性がある。上位進出なるか。

一方の浦和学院だが、これで三年連続公立高校に敗れ甲子園の切符を逃した。
しかも、昨年に続き秋・春と県内無敗で行きながらであるだけに悔しさも相当あるであろう。森監督は受けに回り硬くなる選手達に対し、盛んにリラックスを促してはいるが、どうもここ数年は夏になると急に力を発揮できなくなる状態が続いている。

とくに今大会は、クリーンナップの不調も大きかった。1年生で4番に座った蛭間も春の大会ほどの活躍はできなかった。もう少し楽な打順で打っていれば結果も違ったかもしれない。この日も結局最後まで縦の変化球の見極めができず打線として機能しなかった。そういう時こそ足を絡めたりしなければならないのだが、この日は足を使った攻撃もほとんど見受けられなかった。

そもそも、今年の打線はやや左偏重であったことも大きかった。良い左投手はそうは打てない。もちろん、左対左で左投手によっては投げられない球種やコースが生まれるため、それが絶対当てはまるかと言えば、必ずしもそうとは限らないのであるが。いずれにせよ、浦和学院は例年甲子園の浜風を意識しクリーンアップに必ず一人は右の強打者を据える傾向があるのだが、今年のチームは見当たらなかったのが大きい。リードを許し硬くなる、浦和学院の典型的な負けパターンで敗れたが、佐野はもう一点も与えられない場面で良く投げた。新チームではこの佐野を中心とし蛭間、山本、家盛、杉山とスタメンが多く残るだけに、来年の夏同じ失敗を繰り返さないことを期待したい。

(文=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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