試合レポート

宜野座vs沖縄尚学

2016.07.11

頼れる主将の一発で先制!

 2014年夏の準決勝、沖縄尚学宜野座戦は9回を終えて2-2の同点のまま延長へと突入していった。明治神宮大会を制し選抜高校野球大会でもベスト8進出を果たしてした沖縄尚学は、山城大智安里健らタレント揃いであったが、全員野球で対抗した宜野座の奮闘ぶりは、僕ら高校野球ファンのまぶたにまだ焼きついているかのようだ。その名ゲームの再戦がこの日、同じコザしんきんスタジアムにて行われた。

 沖縄尚学の先発は春の県大会防御率0.26を誇る大会ナンバーワン投手諸見里俊。初戦こそもたついたものの、次戦で一発回答をしたエースがマウンドを預かったが、誰も予想していなかった出来事が起こる。宜野座のジーター(名付け親は僕ですが)と言ってもいい、攻守に柱となるキャプテン佐久田来樹のバットが火を吹いたのだ。諸見里の2球目だった。

 逆風の中、レフトの上空高々と舞い上がった打球は頭上を越え芝生席へ跳ねる!初回先頭打者ホームランというド派手な幕開けを演じたのだ。これで歯車が狂ったのだろうか。諸見里は2回にも2本のヒットと四球を与え満塁とピンチを招く。ピッチャーゴロで何とか切り抜けたものの3回、ついに捕まってしまった。

長短4安打を集めて4点差に広げた宜野座

 押せ押せの宜野座は3回、先頭の大嶺二千翔(おおみね・にちか)が、逆らわない技ありの一打をレフト線へ運び二塁へ達する。続く仲田尚徳(なかだ・たかのり)もセンター前ヒットで出塁し無死一・三塁。

 4番奥間太一の犠牲フライで鮮やかな1点を追加したのだ。ここで沖縄尚学ベンチは諸見里を諦め〔レフトへ回る)松川巧実をマウンドに送ったが、波にのる宜野座打線の勢いを沈めることはかなわない。二死一・二塁から伊藝充騎(いげい・みつき)のライト前ヒットで満塁と攻め立てると、次打者も冷静にボールを見極めて押し出しの四球を得たのだ。

 さらに新里優仁(しんざと・ゆうと)が初球を叩く。四球のあとはストライクを取りたいという投手の心理を巧みに操ったかのようなタイムリーで松川をノックアウト。3番手河野哲平に抑えられたものの、大きな3点がボードに刻まれたのだった。

宜野座・佐久田のエリア6

 どこにも真似が出来ない宜野座の特技、と言ってもいいだろう。それが”相手の野球をさせない”である。それは名門沖縄尚学といえども逃れられないものだった。

 5回、四球とヒットで無死一・二塁と絶好のチャンスを得た沖縄尚学。さあこれから!という絶好の場面であり宜野座はピンチ、のはずだった。「アウト!」次の瞬間、二塁走者が牽制で刺されてしまったのだ。

 気を抜く選手などいない沖縄尚学さえも、エリア6(ショート佐久田の背番号6)の術中の前には丸裸にされるかのようでもあった。これで息を吹き返した宜野座野手陣は次打者をセカンドゴロに斬り併殺を完了。

 終わってみれば無死一・二塁がたった3球でチェンジとなってしまったのだから恐れ入るとしか言いようがなかった。


沖縄尚学の意地!終盤詰め寄り試合は緊迫した展開へ

 それでもこのまま終わる沖縄尚学ではない。

 6回だ。宮城良隆が放った打球は大きな弧を描いてスタンドインのソロアーチ。スタンドにもベンチにも活気と闘志が蘇る見事な一発であった。続く7回、先頭の砂川リチャードがフルスイング!惜しくも切れてしまったが、レフト芝生席を遥かに超えてネットへ突き刺さる大きな一打は、ファールと言えどナインをさらに奮い立たすものとなった。

 一死後、代打比嘉良がセンター前へ弾きかえすと6番比嘉優真がファールで粘った9球目がライトを襲うタイムリー二塁打。4点差が2点差となり、逆転の尚学の本領が発揮されてきたのだ。そして8回、それまでレフトに下がっていた諸見里が再びマウンドへ立つ。セカンドのファールフライ、三振からヒットを浴びたものの次打者をキャッチャーゴロに抑えてナインを鼓舞する姿は、名門とそして主将としての意地であった。

内間が145kmをマーク!宜野座がベスト8へ

 流れは沖縄尚学へと傾いたかに見えたが9回、二死二塁から9番新里優仁がライトへタイムリーを放ち宜野座が再び突き放す。最終回のマウンドには先発の玉城楓に変えて内間拓馬が立つ。

 この日のマックス145kmが電光掲示板に誇らしげに輝き、その剛球にスタンドはどよめきの声を上げた。沖縄尚学は先頭打者の高良諒がヒットで出塁。まだまだこれからだぞという声が聞こえてきたが、最後は無念の併殺でゲームセット。2014年の準決勝で敗れたリベンジを誓い猛練習してきた宜野座が、2年振り20度目となるベスト8進出を果たしたのだった。

(文=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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