試合レポート

埼玉栄vs飯能

2016.07.11

1年生右腕・米倉貫太公式戦デビュー

 鳴り物入りで入学した投手が公式戦先発デビューした埼玉栄にとって、点差以上に苦しい船出となった。

 今年の埼玉栄は、秋春と地区予選も含め1勝もできていないこともあり、若生監督曰く「ダルビッシュ以来の逸材」と1年生ながら早くも注目され始めているMAX142km右腕・米倉貫太を先発、1番ショート海崎雄太、4番・キャッチャー渡部壮大、5番・サード茶屋吹祐馬と完成度の高い1年生をこの日4人スタメンに入れてきた。

 米倉のフォームだが、初見で感じたのはその関係性からダルビッシュ2世などと言われているが、どちらかといえば、フォームは大谷翔平投手に似ている。フォーム間で無駄な力が入っておらず、体全体を使えており、体の使い方がスムースである。体を鍛えればさらに速い球が投げられるようになるであろう。まだまだ伸びしろはありそうだ。

 その注目の米倉の立ち上がり、まずは順調であった。この日はややコントロール重視でMAXは目測で130km中盤ぐらいであったが、確かに指にかかった時のボールの質は良い。その直球を中心に変化球を交え初回、2回と2三振ずつ奪うなど飯能打線を三者凡退に打ち取り危なげない立ち上がりを見せる。

 一方の打線だが、初回飯能のエース吉川健人(3年)の立ち上がりを攻め、先頭の海崎が四球で出塁すると、続く石井潤也(3年)の犠打が相手エラーを誘い無死一、二塁と絶好のチャンスを掴む。だが、3番・西本拓馬(3年)のエンドランはライトフライとなると、渡部、茶屋も打ち取られ無得点で終わる。

 それでも、2回裏、この回先頭の渡邉真輝(3年)がライト越えの二塁打で出塁すると、7番・茂森健(2年)がライト前タイムリーを放ち幸先良く1点を先行する。だが、その後の無死一塁で米倉の犠打がピッチャー前に転がり併殺となると、その後埼玉栄はやや流れを失っていく。


 3回裏も埼玉栄は石井、渡部が四球を選ぶなど一死一、三塁のチャンスを得るが、5番・茶屋がセカンドゴロ併殺に倒れ無得点に終わる。するとこの回辺りから吉川が徐々に落ちつきを取り戻していく。直球や縦スラをコーナーに丁寧に投げ分け、埼玉栄打線の沈静化に成功する。

 一方、4回まで相手打線をノーヒットに抑えていた米倉にピンチが降りかかる。5回表、飯能はこの回先頭の内村嶺人(2年)がショートへの内野安打でチーム初ヒットを放つと、続く山本裕也(1年)が送り一死二塁とする。ここで7番・飯村龍聖(1年)が試みたセーフティーバントはキャッチャー前へ転がる。タイミングには余裕があったが、渡部の送球はショートバウンドとなり一死一、三塁とチャンスが広がる。続く寺本泰剛(1年)に対し、米倉が2ボールとしたところで、若生監督はたまらず、米倉を諦め、2年生左腕・冨屋竜生(2年)をマウンドへ送る。

 飯能ベンチはここで二度スクイズを試みるが、冨屋が冷静に対応し三振併殺で切り抜ける。

 この一連のバタバタに対し、若生監督が選手達を一喝すると、引き締まった埼玉栄の選手達は三巡目を迎えた6回以降吉川を捉え6回3点、7回2点を奪い7点差をつける。投げては冨屋が変化球中心で飯能打線を抑え7回コールドで初戦を突破した。

 まずは飯能だが、部員14人ながらも部員100人以上いる埼玉栄に対し、吉川を中心に執拗に粘り、中盤までは善戦していた。悔やむべくは5回表の攻撃か。この回もし得点を奪うことができていたならば、この試合はもう少しもつれていたであろう。

 一方の埼玉栄だが、この日はエンドランがなかなか決まらず、注目の1年生を含めたクリーンナップがノーヒットに終わった。さらにエラーやボークも出るなど課題が山積している。また、期待の米倉も完成品ではない。5回途中1安打奪三振5はまずまずであろう。ただスタミナ面に不安を残しており、投球以外の部分で修正は必要だ。だが、あくまで初戦ということもあり、特にこの日公式戦デビューだった1年生は緊張もあったであろう。彼らのポテンシャルは高いはずだ。今後も注視する必要があるであろう。

(文=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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