東海大市原望洋vs千葉黎明
この夏も戦国千葉を予感させる春季大会決勝!
逆転打に盛り上がる峯尾(東海大市原望洋)
関東大会出場を決めている両校。この試合は、両チームともエースは先発しなかった。東海大市原望洋の先発は高山祐弥(3年)、千葉黎明の先発は左横手投げの高橋勇介(3年)だ。関東大会や夏の大会を見据えて主力投手以外の投手陣の経験を積ませる意向なのだろう。東海大市原望洋は1回から背番号14の神戸剛(3年)が準備していた。
先制したのは千葉黎明で、二死一、二塁から敵失。さらに2回表には7番根本昌哉(3年)の左前安打と敵失で無死二塁。8番谷祐樹(3年)の内野ゴロの間にに三塁へ進み、9番高橋が自ら適時打を放ち、2対0とする。
3回裏、東海大市原望洋が反撃を開始。1番倉石匠己(3年)が左中間を破る二塁打を放ち、2番藤本誠啓(3年)の死球で一死一、二塁のチャンスを作ると、3番荒川太一(3年)の左越え二塁打で1点を返すと、4番峯尾京吾(3年)の適時三塁打で逆転に成功。さらに一死一、三塁となって、勝ち進むごとに存在感が増し、この日は6番でスタメン出場の具志堅駿(3年)が絶妙なスクイズを決め、4対2とする。
投げては高山が好投。130キロ前後のストレート、スライダーのコンビネーションでテンポよく投球を組み立てる。3回以降は緩いカーブもうまく投げ分けて、緩急を織り交ぜたピッチングでしっかりと試合を作っていった。高山は球速的なものは優れた投手ではないのだが、変化球自体は良く、良い投手である。また高山は左打ちの好打者で、この日は3打数1安打。打席に立った時の雰囲気は投手よりも様になっている印象を受けた。そういうのもベンチ入りできる要因になっているのだろう。
島から二塁打を放った島村(千葉黎明)
このまま東海大市原望洋のペースで進んでいくかと思われたが、今日の東海大市原望洋ナインは、準々決勝、準決勝の2試合と比べるとやや集中力を欠くプレーが多い。7回表には一死一、二塁から失策が飛び出し、一死満塁。東海大市原望洋の2番手は初回からずっと準備をしていた神戸ではなく、エース・島孝明だった。
まず島は根本を147キロのストレートで空振り三振。8番谷に対しても、本日最速の148キロのストレートを連発し、フルカウント。147キロのストレートで二ゴロに打ち取ったがこれが失策となり、二者生還となり、同点を許してしまう。だが代打・境を144キロのストレートで空振り三振に打ち取る。
8回表、島は好投。まず1番藤江康太(3年)を内角の140キロストレートで二飛。2番佐々木海渡(2年)は144キロのストレートで空振り三振。3番大堀智哉(3年)にはフルカウントから内角へ147キロのストレートでどん詰まりで投手ゴロ。あれはまともに打ち返すことができない。
島はまさに力の投球で千葉黎明打線を凌ぐ。
なんとか勝ち越したい東海大市原望洋は8回裏、一死一、三塁から代打・樋口 圭輔(2年)の勝ち越しスクイズ。さらに島が一塁へ打ち上げたが、これが強風に大きく煽られて、右翼線へ落ちる安打となり、さらに1点を追加する。この1点は大きかった。
9回表、千葉黎明の4番島村篤史(3年)が140キロのストレートを捉え、左越え二塁打を放つ。高めのストレートをしっかりとおっつけて逆方向に打ち返した打球。この選手、下半身の粘りがしっかりとしていて、この二塁打も見事にボールをを引き付けた打撃だった。5番川口廉(3年)は、142キロのストレートをニゴロ。6番小林洋亮(3年)は145キロのストレートで空振り三振に打ち取り、二死となったが、代打・木内に高めの145キロストレートを打ち返され、左前適時打となり、千葉黎明打線を6対5と1点差にされるが、8番谷祐樹(3年)は148キロのストレートを投げ込むなど力で行くところが見られたが、最後は129キロのスライダーで空振り三振に打ち取り、島はくるっと回ってガッツポーズ。捕手の峯尾と抱き合い、喜びを露わにしていた。
場内行進する東海大市原望洋ナイン
今日、東海大市原望洋は5失策とただ反省するだけの試合内容。それでもミスを取り返すだけの打撃を見せたのは良かったのではないだろうか。ただ今回、取られた失点内容は、夏では間違いなく命取りになる。
本当ならば神戸を投げさせたい考えもあったのかもしれない。島を投げさせたのはチームを引き締める狙いもあったのではないだろうか。そしてこういう接戦を勝利することが夏につながるとも考えていたのだろう。
さて島だが、今大会の活躍はまさに主役と呼べるような活躍だった。島が一気に注目を浴びるようになったのは3回戦の市立船橋戦からだが、今大会は8回を投げて16奪三振なのだからどれだけ驚異的な三振数奪っているなのかが分かるだろう。今日の島は最速148キロを7球計測するなど、平均球速は144.16キロと3イニングでこの球速なのだから、素晴らしいといえる。ストレートで空振りを奪っているし、大きな曲りをするスライダーで三振を奪っていて、四死球もなかった。だがもう1つ求めるとすれば、三振だけではなく、球数を少なく収められる投球をすること。今の島の投球を見ると三振を狙いすぎているところがある。直球偏重の配球になったため、球数が無駄に多くなる。直球が来ていることが分かっているため、適時打を打たれた結果となった。プロへいく才能を持っている投手だと思うので、厳しくいえば、適時打を打たれるまでの過程・配球を反省する必要があるだろう。
いくつも変化球を増やす必要はないとはいえ、何か内野ゴロを取れるボールがあれば、もう少し投球は楽になるだろう。それができれば、同じ東海系列の大先輩である菅野智之(巨人)のように三振と打たせて取る投球が自在にできる投手になるはずだ。
敗れた千葉黎明は最後まで追い詰めた試合運びは見事で、島に振りまけない打撃を見せた島村、木内。セーフティバントを成功させた藤江など野手たちの活躍も光り、またエース川口を投げずに東海大市原望洋打線を6失点にとどめた投手陣の働きも評価できるのではないか。
シーズン前の展望では木更津総合がリードしていると書いたが、総合力は木更津総合に見劣りしないチームが出てきた。特に優勝した望洋は以前から投打の総合力は上回ると記してきたが、今回の優勝で、木更津総合の対抗馬にあがったのは間違いないだろう。望洋を初めとした各校の進化ぶりを見るとやはり2016年の千葉の夏も、戦国になるのではないかと思わせる決勝戦だった。
(文=河嶋宗一)
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