試合レポート

関東一vs日大三

2016.04.10

逆転また逆転を打撃戦、佐藤佑亮の決勝打で関東一が日大三を下す

関東一vs日大三 | 高校野球ドットコム

小谷野 楽夕(日大三)

 東西の東京を代表する強豪対決であり、日大三の小倉 全由監督と関東一の米澤 貴光監督による師弟対決でもある。またこの両校は、昨年の春も対戦しており、この時は、小谷野 楽夕投手の好投もあり、日大三が勝利している。

「昨年は小谷野君のスライダーの威力を、嫌と言うほど感じました」と米澤監督は語る。この試合も日大三の先発は小谷野、関東一日大三に左打者が多いということもあり、左腕の佐藤 奬真が先発した。

 1回表日大三は、2安打と四球で一死満塁とし、5番・古田 虎支郎の右前安打で1点を先取した。しかしなおも続く満塁のチャンスを生かせず、1点止まりだったことが、後になって響く。

 その裏関東一は、1番・米田 克也がセンターのフェンス直撃の二塁打を放つ。2番・本橋 慶人のバントは内野安打になり、3番・山室 勇輝が四球で満塁。しかし4番・佐藤佑亮は三振し、5番・竹井 丈人は遊ゴロ。併殺かと思ったが、竹井はセーフ。三塁走者の米田だけでなく、二塁走者の本橋も一気に本塁を陥れ、関東一が逆転した。

「キャッチャーは(一塁が)アウトと思って帰りかけているのだから」と小倉監督。二塁走者も生還した関東一の走塁は見事であったが、足の速い選手が多い関東一と対戦するにあたって、日大三としては珍しく集中力を欠いていた。

 さらに関東一は、6番森川瑶平の二塁打、7番・石塚 大樹の中前安打で2点を追加する。「ツーアウトからの2点ですからね」と、日大三の小倉監督。点数が多く入った試合ではあったが、初回の4点は、両チームにとって大きかった。

 その後も関東一は、3、4、5回に1点ずつ取る。日大三のエース・小谷野は3回途中で降板しており、これはコールドになるのではないか、という声も聞こえ始めた。もっとも関東一の米澤監督は、「簡単には行かないと思っていました」と語る。そして後半になると、日大三の反撃が始まる。

 6回表は2つの四球で無死一、二塁とし、4番・山本 幸次郎、5番・古田の連続適時打で2点を返す。7回表も一死後、関東一の佐藤奬は2人連続して四球で歩かせる。3番・坂倉 将吾は三飛に倒れたものの、続く4番・山本の左前適時打でまず1点。5番・古田に四球を出して満塁となったところで、米澤監督は佐藤奬から期待の2年生右腕・高橋 晴に交代する。交代のタイミングとしては、やや遅い感じもあったが、「(佐藤奬に)経験を積ませたかった。完投してくれくらいの思いはありました」と、関東一の米澤監督は語る。


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決勝打を放った佐藤佑亮(関東一)

 高橋に交代した直後、日大三は6番・櫻井 周斗の左前安打で1点。さらに6回裏から3番手投手として登板している阪井 康太が満塁の走者を一掃する二塁打を右中間に放ち、日大三は一気に逆転した。

 なお二死二塁で、前の回から一塁の守備についている8番・比留間 海斗の打球は、二塁ベース後方にふらふらっと上がる難しいフライ。これを、二塁手の山川 新太は、必死になって捕球し、追加点を許さなかった。実は大敗したセンバツの東邦戦では、似たような打球を何度か捕球できず、傷口を広げた。そのため、「センバツから帰って、練習もしていました。ひとつ成長してくれた。山川のあのプレーは大きかった」と、米澤監督が振り返る。

 8回表からは、昨夏の甲子園はベンチ入りしている、竹井 丈人がマウンドに上がった。捕手の佐藤 佑亮が「(竹井は)気合十分でした」と語る力投で、日大三に傾きかけていた流れを、完全に引き戻す。

 8回裏関東一は、8回から守備に入っている中島 健登の二塁打、1番・米田の死球、2番・本橋の犠打で一死二、三塁。3番・山室は三振に倒れ、打席にはこの試合1安打ながら、当たっていない4番の佐藤佑が入る。「体が開き気味だと、監督さんからアドバイスをもらいました。打つなら初球を捉えようと思っていました」と佐藤佑。その言葉通り初球を叩くと、レフト線への二塁打となり、2人が還り、またしても関東一が逆転した。9回は竹井が締めて、9対8の壮絶な打撃戦は、関東一が制した。

 激戦を終え、関東一の米澤監督は、「勉強になった試合でした。選手も一つ強くなったかなと思います」と語る。自分たちはまだ弱いことを認識させられたセンバツを経て、関東一のチーム力は、また上がっている。

 敗れた日大三の小倉監督は、「情けない」と嘆いた後、「秋に向けて頑張りますよ」と漏らした。もちろん本心ではないだろう。ただ、それだけショックの残る敗戦であった。

 日大三の選手の体は、冬の間のトレーニングの成果で、よりたくましくなっているように感じた。ただそれが成果に表れない。それでも、夏に向けて強くなっていくチームだけに、あと3カ月での立て直しに期待したい。

(取材・写真=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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