館林vs市立川越
9回に一打同点もしくは逆転の場面が相次ぎ、大会へ向けていい緊張感を経験
館林・吉原君
埼玉県は4月2週目くらいから春季県大会へ向けて、まずはブロック予選が始まる。そして、その代表が決まると、下旬からの県大会が行われて、夏の選手権のシード権獲得と関東大会出場を目指す。群馬県は9日から全県で春季県大会が開催されるのだが、既にその組み合わせも決まっている。それだけに、館林としては、ある程度の意識も高まっており、チームも一通りの仕上げに向けていきたいところである。
今年は春季関東大会の開催が群馬県となっており、県代表は4校分あるだけに、ベスト4が目標となる。館林としても、何とか食い込んでいきたいところだが、かつては公立校王国だった群馬県も、桐生一の躍進後、近年では前橋育英、健大高崎などがそれぞれ甲子園でも活躍を見せて、この3強が競い合うという構図が定着してきている。さらには、樹徳などもあり、それらに食い込んでいくカベは年々高くなっているというのもまた現実であろう。
群馬県の公立校の場合、特に普通科進学校は男子校となっている学校が多い。今年、創立94年目を迎えるという館林もその一つだ。時代の流れの中で、共学校化へ…という流れもあるようだが、卒業生などを中心に、現在の男子校、女子校スタイルを維持していってほしいという願望も強いようだ。自身も館林高校出身という、昨年夏に就任した細森 和弘監督は、「おそらく、100周年までは今の形が続くのではないでしょうか。それを機に、共学化となっていくという動きもあると思います」と見ている。
学校としては現在、1学年6クラスあるというが、少子化という現実もあり将来的には館林女子との統合は避けられないのかもしれない。野球部としては、現在は新2年生と3年生で35人、これに新1年生が入ると、総勢50人くらいにはなりそうだ。細森監督としては、適正人数ではないかという判断である。学校は、かつて軍事訓練も行われたこともあるという土地で、グラウンドは広い。とはいえ、その歴史からも、敷地内に小山があったり、木が植えられていて、「樹を少し切ったりするのにも、お伺いを立てなくてはいけないんですよ」と苦笑する。
試合は、2試合ともに接戦となり、しかも9回には負けているチームが1打同点、逆転という形を作り上げていって、緊迫の場面となった。苦しい場面をどうしのいでいかれるのかというシミュレーションとしては非常によかったのでないだろうか。
1試合目では館林は吉原君が完投。ナックルカーブという抜いたボールを上手に使いながら、チェンジアップの使い方など、タテの変化球が持ち味。肩の筋肉が柔らかい感じで、球持ちのいい投球フォームで、打てそうで打てない投手と言っていいだろう。
9回は簡単に二死を取ったものの、そこから松尾君、石井君と8番9番に連打され、1番武居君に四球で満塁。1点差ということもあり、たちまち逆転のピンチになったが、最後は吉原君が投げ勝った。初回も先頭の武居君に三塁打されたものの、その後を何とか抑えきっている。打たれながらも粘れるというあたりも特徴である。
どちらの試合でも4番に捕手が座ったが、実はどちらも打撃もいいので、どう使い分けていくのか、細堀監督としては嬉しい悩みでもある。「最終的には、打撃のことを考えると、どちらかを外野で使っていくという手もあると思っています」と言うように、大会までには、あとわずかな期間の中で、いろいろ試していきたいという思いもあるようだ。
市立川越・小川君
市立川越は、父親がスリランカ人というメンデス君という注目の投手がいるのだが、この日はひじにやや違和感があるということで登板しなかった。代わって、左腕の小川君が先発完投したが、投げ込んでいきながら制球もよくなっていくという感じで、スライダーも低く集まっており、失点をしたイニング以外は安心して見られた。ただ、時に崩れていく、イニングによって波があり、このあたりが新井 清司監督としても絶対的に任せられないところでもあるという。
2試合目で7イニング1失点に抑えた下手投の早川君は、ふわ~っと浮いてくるような球が特徴だが、ここへ来てスピードがついてきたことで、却ってとらえられてしまうこともあるというのだから、投手というのは難しいものである。市立川越は最後の2イニングは荻原君が投げたが、前日の試合では股間に打球を直撃したというが、大事がなく、この日も投げられたのはよかった。四球と安打で作った無死一二塁という9回のピンチも、なんとか1失点のみで逃れて、二死一三塁を切り抜けた。
新井監督は、この3月で市立川越の教員としては、一旦は定年退職となっている。ただ、継続雇用ということで、野球部も含めてそのまま指導し続けている。「給料だけ下がって、同じことやってんだけれどもね…」と新井監督は笑うが、近年は安定した実績を上げている公立強豪校でもある。在任中に何とか一度、甲子園という檜舞台に届きたいという思いは変わらない。
外野後方に植えられている桜の木も満開の花をつけて、新入生を迎えようとしている。この日は午後に、25人入部が予定されているという新入生が練習に参加。この4月に草加西から異動してきた市立川越のOBでもある甲原 史朗コーチの指導の下、満開の桜木に見守られながら身体を動かしていた。
この時期の学校のグラウンドでは、そんなフレッシュさを随所に感じられるのもいい。
(取材・写真=手束 仁)
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