都立文京vs都立総合工科
都立校甲子園出場監督同士の因縁対決は文京が先制攻撃で制す
文京・浅川君
20世紀から21世紀にかけて、都立城東を甲子園に導いた監督対決である。
99年夏に有馬 信夫監督が東東京としては初めての都立校の甲子園出場を果たす。その2年後、有馬監督を引き継いで赴任した梨本 浩司監督は日体大では2年後輩にもあたるのだが、再び都立城東を甲子園に導いている。この隔年の都立城東の甲子園出場で、明らかに都立校の選手たちも指導者も意識が変わった。甲子園を現実のものとしてとらえられるようになってきたのである。そんなエポックとも言える現象だった。
そんなエポックメーカーとなった2人の対決である。高校野球研究会などを通じて、普段でも交流の深い同士でもある。東京都の高校野球ファンにとっても興味も深いものとなった。後輩でもある梨本監督は、「なるべく有馬さんの顔を見ないように、ベンチでの位置も考えますよ」と、お互いに手の内を知っている同士でもあり、大いに意識していた。
そんな独特の緊張感がある中で始まった試合は、都立文京は背番号3ながら実質はエース格だという浅川君が先発。右サイドからのシュート、スライダーなど多彩な球種なのだが、時にスリークォーターになったり、オーバーハンドになったりと、投げ方も多彩だ。身長182cm体重76kgと恵まれた体格で打っても4番である。
一方の都立総合工科は右アンダースローの内藤君で、スーッと低目にスライダーを集めていって投球を作っていくタイプ。その、内藤君の立ち上がりを都立文京は巧みに突いた。
初回の都立文京は、先頭の山﨑君が右前打で出ると、盗塁と四球で一二塁。宮坂君がしっかりバントで進めて二、三塁。そして浅川君が左前へタイム―打で先制。さらに、2回にも先頭の古坊君が死球で出る。有馬監督によると、これが、結果的には大きなポイントになったことになる。
総合工科・内藤君
「スライダーが抜けちゃって当ててしまって、それでスライダー投げられなくなって、ストレートに絞られて打たれてんだよ」と言うように、9番・原君が中前打して1番・山﨑君も右線に二塁打して2点目が入る。さらに、渡辺君は初球スクイズ。梨本監督は、「めったにしないスクイズなんですけれども、有馬さんは(それを知っていて)警戒していないだろうから、思い切ってやってみましたが、見事に決まりました。これは大きかったですよ」と、ズバリ当たった作戦を素直に喜んだ。
この3点リードで、浅川君はさらに自分のリズムで投げられるようになっていった。都立総合工科打線は、どんどんと追い込まれていって、絞りきれなかった。それでも都立総合工科は、9回には先頭の3番・宮坂君が中前打して捕逸などで進めて、二死三塁から谷口君の右前打で帰して一矢を報いた。しかし、反撃もここまでで、最後は浅川君が代打向山君を三振で切って取って、8個目の三振を奪ってゲームセットとなった。
「お互いに手の内がよくわかっているということは、いい面と悪い面とがあると思うのですが、それが今日はウチにとってはいい面が出ました。ブロック予選から、ここまでは継投でやってきていたんですけれども、今日は浅川を代えるタイミングも難しかったんですけれども、こういう形の完投は予定外でしたがよかったですよ」と、梨本監督は攻守にバランスがいい試合だったと実感していた。
序盤の失点を返し切れなかった都立総合工科だったが、有馬監督は、「先制攻撃されたというよりも、こっちが勝手に崩れてんだよ。内藤には、アウトコースのコントロールをつけろということはずって言っていたんだけれども、結局それがまだでききれていなかったから、こうなっちゃうんだよ」と、嘆いていた。とはいえ、夏までには、鍛え直していくというは間違いないだろう。
(取材・写真=手束 仁)
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