試合レポート

都立文京vs都立総合工科

2016.04.03

都立校甲子園出場監督同士の因縁対決は文京が先制攻撃で制す

都立文京vs都立総合工科 | 高校野球ドットコム

文京・浅川君

 20世紀から21世紀にかけて、都立城東を甲子園に導いた監督対決である。

 99年夏に有馬 信夫監督が東東京としては初めての都立校の甲子園出場を果たす。その2年後、有馬監督を引き継いで赴任した梨本 浩司監督は日体大では2年後輩にもあたるのだが、再び都立城東を甲子園に導いている。この隔年の都立城東の甲子園出場で、明らかに都立校の選手たちも指導者も意識が変わった。甲子園を現実のものとしてとらえられるようになってきたのである。そんなエポックとも言える現象だった。

 そんなエポックメーカーとなった2人の対決である。高校野球研究会などを通じて、普段でも交流の深い同士でもある。東京都の高校野球ファンにとっても興味も深いものとなった。後輩でもある梨本監督は、「なるべく有馬さんの顔を見ないように、ベンチでの位置も考えますよ」と、お互いに手の内を知っている同士でもあり、大いに意識していた。

 そんな独特の緊張感がある中で始まった試合は、都立文京は背番号3ながら実質はエース格だという浅川君が先発。右サイドからのシュート、スライダーなど多彩な球種なのだが、時にスリークォーターになったり、オーバーハンドになったりと、投げ方も多彩だ。身長182cm体重76kgと恵まれた体格で打っても4番である。

 一方の都立総合工科は右アンダースローの内藤君で、スーッと低目にスライダーを集めていって投球を作っていくタイプ。その、内藤君の立ち上がりを都立文京は巧みに突いた。

 初回の都立文京は、先頭の山﨑君が右前打で出ると、盗塁と四球で一二塁。宮坂君がしっかりバントで進めて二、三塁。そして浅川君が左前へタイム―打で先制。さらに、2回にも先頭の古坊君が死球で出る。有馬監督によると、これが、結果的には大きなポイントになったことになる。


都立文京vs都立総合工科 | 高校野球ドットコム

総合工科・内藤君

「スライダーが抜けちゃって当ててしまって、それでスライダー投げられなくなって、ストレートに絞られて打たれてんだよ」と言うように、9番・原君が中前打して1番・山﨑君も右線に二塁打して2点目が入る。さらに、渡辺君は初球スクイズ。梨本監督は、「めったにしないスクイズなんですけれども、有馬さんは(それを知っていて)警戒していないだろうから、思い切ってやってみましたが、見事に決まりました。これは大きかったですよ」と、ズバリ当たった作戦を素直に喜んだ。

 この3点リードで、浅川君はさらに自分のリズムで投げられるようになっていった。都立総合工科打線は、どんどんと追い込まれていって、絞りきれなかった。それでも都立総合工科は、9回には先頭の3番・宮坂君が中前打して捕逸などで進めて、二死三塁から谷口君の右前打で帰して一矢を報いた。しかし、反撃もここまでで、最後は浅川君が代打向山君を三振で切って取って、8個目の三振を奪ってゲームセットとなった。

「お互いに手の内がよくわかっているということは、いい面と悪い面とがあると思うのですが、それが今日はウチにとってはいい面が出ました。ブロック予選から、ここまでは継投でやってきていたんですけれども、今日は浅川を代えるタイミングも難しかったんですけれども、こういう形の完投は予定外でしたがよかったですよ」と、梨本監督は攻守にバランスがいい試合だったと実感していた。

 序盤の失点を返し切れなかった都立総合工科だったが、有馬監督は、「先制攻撃されたというよりも、こっちが勝手に崩れてんだよ。内藤には、アウトコースのコントロールをつけろということはずって言っていたんだけれども、結局それがまだでききれていなかったから、こうなっちゃうんだよ」と、嘆いていた。とはいえ、夏までには、鍛え直していくというは間違いないだろう。

(取材・写真=手束 仁

都立文京vs都立総合工科 | 高校野球ドットコム
注目記事
2016年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!