興南vs石見智翠館
これぞ興南の底力!ブーメラン継投、力尽きる
石見智翠館主将・田中 将貴。8回に3点差をひっくり返された興南が9回裏に逆転サヨナラ勝ちを収めるという劇的な大熱戦の中でも、彼は特に鮮烈な印象を残した。
島根代表・石見智翠館は初回に1点を先制されるものの、その後はブーメラン継投と自分たちで名付けた、エース・田中 将貴と安藤 颯を中心に投手が入れ代わり立ち代わりマウンドに立つ継投策で沖縄代表・興南打線を抑え続ける。
対してこちらも粘り強い投球で7回まで1失点に抑えてきた興南先発の2年生左腕・比屋根 雅也。ストレートの球速こそ130キロ前後ながら、かつての島袋 洋奨(現:福岡ソフトバンクホークス)ばりのトルネードからサイド気味に腕を出す独特の投法が要所で威力を発揮。だが、真夏の甲子園の暑さ、そして石見智翠館の粘りにスタミナを奪われ、徐々に球が高めに浮いてくる。そこを見逃す石見智翠館ではなかった。
石見智翠館が1対4と3点のビハインドで迎えた8回表、二死走者なし。ここから石見智翠館は死球とヒットで一、二塁のチャンスを作る。阿部 和真が2点タイムリーツーベースを放ち1点差とすると、暴投を誘い同点に。さらに満塁とすると、この大事な場面で打席に送り込まれた代打・橋 敬良がライトへタイムリーを放つ。石見智翠館はこの回4点を奪い5対4と逆転。チャンスを虎視眈々と待ち構え、一気に襲い掛かる姿は見事というほかない。
だが、興南は相手のブーメラン継投にも、試合終盤の逆転にも自分たちのリズムは崩さなかった。
次々と代わる投手にもそれぞれバント等でプレッシャーをかけ続け、いよいよ9回裏。何度もレフトとマウンドを往復しピンチを救ってきた石見智翠館エース・田中 将貴に襲い掛かる。
この回先頭の具志堅 大輝がショートへ強烈な内野安打を放ち出塁。続く喜納 朝規はきっちりと送りバントを決め、代走の高那 峻は石川 涼のヒットで同点のホームを踏む。そして最後、代打の城間 楽人がレフトへサヨナラタイムリーを放ち、熱戦に終止符が打たれた。
関わった全ての選手が自分たちの役割を果たしたこの試合は、多くの観客の胸を打った。
試合後「ピンチを何度も、何度も、何度もしのいでくれた」と石見智翠館・末光 章朗監督が労った田中は、目に涙を湛えながら甲子園を去っていく。彼は「負けたチームの主将」となったが、紛れもなくヒーローだった。その背を見つめ続けた下級生たちが、思いを引き継いでいくことだろう。
(文=青木有実子)
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