試合レポート

花巻東vs専大松戸

2015.08.08

原嵩に求めたい新たなフォームの動き、高橋樹也から漂うベテラン投手の風格

高橋樹也(花巻東)

 花巻東高橋樹也専大松戸原嵩の対決に注目が集まった一戦。それぞれストレートの最速が140キロ台後半を記録する本格派である。この試合では原が144キロ、高橋が140キロと自己最速には遠く及びなかったが、4対2のスコアが示す通り持ち味は十分発揮した。

 原は投球フォームが随分変わった。よくなった部分と悪くなった部分が混在し、一言で「良い・悪い」と言えないのだが、よくなったのは過剰な上半身のねじりがなくなった部分、悪くなったのは二段モーションっぽい動きで、ピッチングの流れが悪くなった部分。初回、花巻東の攻撃が終わったとき球審の桑原和彦さんに何か言われていたのは、二段モーションの指摘だと思う。桑原さんはさすがに見逃してくれない。

 この投球フォームの変化は軸足への体重の乗り方を考えたためだろう。後ろに残したパワーをリリースで全開にするための二段モーションっぽい動きだと思うが、たとえば前日に登板した中京大中京の先発・上野翔太郎は軸足に体重を残しながら、マウンドの傾斜に気持ち良く体を預けていた。今の考え方を維持しながらああいう形を追求できないかと思う。

 花巻東の高橋は大人のピッチングをした。スカウトには物足りないと思うが、スタミナ切れに配慮した“7割ピッチング”はたとえば社会人のベテラン左腕を思わせた。私はスカウト的な見方をする人間なのでもちろん物足りなさはあったが、右肩の早い開きを抑えた投球フォームはボールの出所を見えづらくし、1回の投球前にきちんと歩測してステップ位置を確認するしぐさなど、感心することが多かった。


関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

第97回全国高等学校野球選手権大会

 いい投球フォームで力強いストレートとキレのいい変化球を安定して投げられることが、プロ・アマに関係なくいいピッチャーの証しなので、高橋にはまず「力強いストレートを安定して投げたい」という強い欲望を持ってもらいたい。聞けば、東北大会の高橋はエンジン全開で140キロ台中盤のストレートをがんがん投げていたらしい。甲子園の大舞台が自身のパフォーマンスより勝負優先にさせたのか。

 ストレートは物足りなかったが、スライダーのキレは話題になるだけあった。一番いいのはストレートを同じ腕の振りで投げられること。これに115~120キロのチェンジアップと90キロ台のスローカーブを交えたピッチングは、くどいがベテランの風格があった。キレのいい変化球を制球よく投げるというのも得難い長所なので、この部分を残しながらストレートに磨きをかけてもらいたい。

 この試合ではもう1人、“プロ注”と話題になった選手がいた。専大松戸の1番、渡邉大樹(遊撃手)だ。第3、4打席で右、左にヒットを打ち分けたが、まだまだだと思った。「腰を落として、バットを担いで、右肩上がり」というのが構えたときの形。内角ストレートに対する対応が不十分で、大学の4年間でどう変われるかだろう。

 話題になっていない選手で注目したいのは花巻東の2年生捕手、福島圭斗。170センチ、68キロと小柄でも、最速1.95秒の二塁スローイング(イニング間)は見応えがあった。未登板ながら千葉耕太(191センチ)という2年生の大型右腕も控え、次代のチームへの配慮も行き届いている。

(文=小関 順二


関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

第97回全国高等学校野球選手権大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!