試合レポート

大阪偕星学園vs大体大浪商

2015.08.01

大阪偕星学園、猛練習でつかんだ初の甲子園切符

 49番目の甲子園行きを懸けた大阪の決勝戦、プレーボール直後の第1球を大阪偕星学園の1番・姫野 優也(3年)が振り抜くとあわやホームランという大ファールが三塁側スタンドに消えた。共に打線に力がある大阪偕星学園大体大浪商の顔合わせとなった決勝戦はどちらも気の抜けるような打者はおらず通常の内野ゴロでも打球は強く速い。

 大事な試合の先発を任されたのは大阪偕星学園がエース左腕の光田 悠哉(3年)で大体大浪商は本格派右腕の西田 光汰(2年)。光田は左右関係なく決まるインストと外スラが持ち味で変化球が手前でワンバウンドすることはあっても甘く入る失投が無く、西田は2年生ながら堂々としたマウンドさばきで大阪偕星学園打線に真っ向勝負を挑み互いに序盤2回を無失点に抑える。

 試合が動いたのは3回。一死から大阪偕星学園の8番・光田がチーム初ヒットを放つ。1ボール2ストライクと追い込まれていたが、わずかに浮いた西田のストレートを逃さずレフト前に弾き返した。好打者・姫野の前に得点圏のランナーを置きたい大阪偕星学園は一死からでも9番・的場 優斗(2年)が送りバント。これが決まり二死二塁となると大体大浪商は姫野を敬遠。両ベンチが姫野の打撃力を高く評価しているからこその応酬だった。二死ながらランナーが2人たまった大阪偕星学園は2番・戸嶋 泰貴(3年)がレフト前にタイムリーヒットを放ち1点を先制。続く3番・西岡 大和(3年)の痛烈な当たりはショートライナーとなり追加点はならなかったが大阪偕星学園が先手を取った。

 先制を許した大体大浪商はその裏、内野安打と四球で二死ながらチャンスを作ると4番・柴田 武蔵(3年)がレフト前にタイムリーヒットを放ちすぐさま同点とする。ノーボール2ストライクからやや外し気味のストレートでも全力で腕を振って投げていた西田は、4番の一打で試合を振り出しに戻してもらうと中盤にかけてさらに球威が増す。一方の大阪偕星学園の先発・光田は中盤に差し掛かるとランナーを背負う場面が増える。序盤のような球威がなく、大体大浪商の7番・岩川 優作(2年)に打たれた初ヒット、4番・柴田に打たれた同点タイムリー、結果的にはゲッツーになったが4回一死一、二塁の2ボール1ストライクというバッティングカウントから西田が打った球は全て右打者のインコースへのストレートを狙い打たれたもの。武器であるはずのクロスファイアで押し込めず、ストレートに見える軌道から鋭く曲がるはずのスライダーもキレを欠き見極められる。大体大浪商に流れが行きかけたが、先に追加点を挙げたのは大阪偕星学園だった。


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 6回、一死から西岡 大和がライト線に落ちるツーベースヒットで出塁すると田端 拓海(3年)への初球がワイルドピッチとなり三塁に進む。すると1ボール1ストライクの3球目にスクイズを敢行。これはファールになったが、1球ボールの後再び三走・西岡がスタートを切る。4番がスリーバントスクイズを成功させ待望の勝ち越し点を挙げると、7回にも的場のタイムリーツーベースで福田 丈志(3年)が還り加点。その後1点ずつ取り合い9回裏を迎えると2点を追う大体大浪商が意地を見せる。

 先頭の岩﨑 將(2年)が初球を叩いて三遊間を破ると、キャプテン・津田 諒哉(3年)もショートの頭上をライナーで越えるレフト前ヒットで続く。同点のランナーを出して4番を迎えると柴田も三遊間を破り無死満塁。この間に光田 悠哉が投じたストライクは全5球。それに対して大体大浪商の上位打線がスイングした回数は5回。3つのアウトを取られる前に2点取らなければ負けという追い詰められた状況の中、ストライクは全て振った。

 一打同点の場面を作ると5番・西川 裕哉(3年)も初球をスイング。ショート正面のライナーで一死となると、準々決勝のPL学園戦(試合レポート)でラッキーボーイ的な活躍を見せた北山 諒(3年)もファーストストライクからスイング。これがファールになると2球目も叩いて一、二塁間を割る。この当たりで三走・岩﨑に続いて二走・津田が同点のホームを狙うが6回に一度マウンドにも上がったライト・濱口 尚弥(3年)からの好返球で余裕を持ってタッチアウト。二死一、二塁と尚も同点のチャンスは続いたが岩川 優作がサードゴロに倒れゲームセット。大体大浪商は相手を上回る14安打を放ち最後にも粘りを見せたがあと一歩及ばなかった。

 大阪偕星学園は、鋭い打球が野手の正面を突く不運が何度もありビッグイニングは作れなかったが2桁安打を放ち大体大浪商に1度もリードを許さないまま逃げ切った。6つ記録された犠打は田端がスクイズを1球ファールにした以外は全て1球で成功。夜中までの猛練習で何百球と転がし続けた成果を大一番で発揮し攻撃のリズムを作った。
守備でもバウンドが合わずエラーすることはあっても決して後ろに逸らさない。練習が終わる時刻は日付けが変わるのが当たり前という練習に耐え抜き、準々決勝(試合レポート)での決勝(試合レポート)で敗れた大阪桐蔭にリベンジを果たすと一躍全国区に。気迫と魂の込もった全力プレーを武器に春夏通じて初となる甲子園でも大暴れを誓う。

(文=小中翔太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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