横浜vs桜丘
投打で成長!横浜が5回コールド発進
春日井静斗(横浜)
秋、慶應義塾にコールド負けを喫し、長い冬を迎えた横浜。だが、一冬越えてから変わるチームだけにどんな戦いを見せていくか注目を浴びていた。県大会初戦の相手は、神奈川桜丘。
横浜は1回裏、1番相川天河(3年)が死球で出塁し、2番向川原 健人(2年)の犠打で一死二塁とすると、3番公家響(2年)が左翼線を破る適時三塁打で1点を先制すると、さらに4番三河聖央(3年)の犠飛でこの回、2点を先制する。
2回裏、一死一、三塁から1番相川の犠飛を放ち、3対0とすると、敵失で1点を追加し、さらに二死二塁から4番三河の適時二塁打が飛び出し5対0とさらに点差を広げる。
投げては背番号10の春日井静斗(3年)が昨年よりも成長を見せた姿を見せた。183センチとすらっとした長身が目につく左腕だが、昨年よりも体が逞しくなり、筋力的な弱さが改善されつつある。球速は130キロ前半ながら、ストレートのキレ、回転の良さ、コントロールは素晴らしいものがあり、いわゆる空振りが奪えるストレートだ。何より良いのは投球フォーム。
ノーワインドアップから始動し、右足を胸の近くまでバランスよく上げていく。この時、軸が全くぶれておらず、この冬、しっかりと走り込んできたのが伝わってくる。歩幅を広く取った踏み出しから左腕は内回りの旋回で、トップにもっていき、左ひじがしっかりと上がった状態からリリースに入ることができている。横浜は伝統的に彼のような後ろ小さく前大きくのメカニズムを伝承するが、春日井はこのメカニズムがあっているのだろう。余分な力みがないバランスが取れた投球フォームである。
さらに4回裏、横浜打線は一死二塁から3番公家の適時二塁打で6対0とすると、三河の二塁内野安打で一死一、三塁とチャンスを広げると、5番石川の死球で、一死満塁にすると、代打・藤平尚真(2年)の左前適時打、代打・東保輝(3年)の2点適時打、代打・喜多村の犠飛で10対0とする。
4番・三河聖央(横浜)
ここまで横浜の攻撃を振り返ると実にソツがない。また好選手も非常に多い。1番で主将の相川は脚力だけではなく、常に全力疾走を心掛ける。ややグリップの位置が低い構えからギリギリまで引き付けて広角に打ち返す打撃に、守備範囲の広さが目立つ。2番向井原は俊足で、盗塁技術も高く、ソツがない二塁守備が魅力。
3番公家は打撃の潜在能力ならば今年の横浜では、トップクラス。力みの無い構えからインパクトまで無駄なく振りぬくことができるミートセンスの良さ、スイングスピードの速さ、打球の速さは群を抜いている。ライナー性が多い中距離打者で、勝負強さもある。三塁守備も磨かれていくとより注目を浴びるだろう。
4番三河は打球方向を見ていくと引っ張り中心だが、縦振りのスイングから角度ある打球が打てる左打ちの選手。捉えた打球そのものはピカイチなものがあり、またボールの待ち方がゆったりとしていて、柔軟性のあるバットコントロールも光っていた。今後の打撃を注目していきたい選手。
また6番山田 知樹(3年)は1年から出場経験のある捕手だが、昨年と比べるとだいぶどっしりと構えて試合に臨むことができるようになった。それもあって、キャッチングもだいぶ安定し、投げる春日井との呼吸は抜群。また1.9秒台をコンスタントに計測するスローイングも見事であった。
そして5回表、2番手に北山比呂(3年)がマウンドに登った。横浜の投手らしい下半身主導のフォームから投げ込む投手で、常時135キロ前後(最速139キロ)の速球に加え、キレのあるスライダー、カーブをテンポよく投げ分ける投手。しかし当てたバットが右前安打になったり、死球などに二死二、三塁のピンチを招き、最後、内野ゴロに打ち取ったと思った当たりが、失策になり、そして2番松野に適時三塁打を打たれ、2点を失い計3失点。不運な点の取られ方だったが、潜在能力は高いことは十分に伝わった。やや投球内容が単調になったり、テンポも投げ位急ぐところがあったので、そこさえ改善できれば、しっかりと活躍できる投手だろう。
その裏、横浜が3点を入れてサヨナラ勝ちを決め、3回戦進出。投打ともに順調な仕上がりを見せた試合となった。次は桐蔭学園と対決。桐蔭学園も秋から成長を見せているだけに、熱戦が期待できそうだ。
(文=河嶋宗一)