出水中央vs鹿児島実
自分たちの野球、「開花」・出水中央
サヨナラ打を放つ宮田輝星(出水中央)
出水中央が劇的なサヨナラ勝ちで、シード鹿児島実に競り勝ち、06年春以来9年ぶりとなる4強入りを決めた。
序盤は鹿児島実が先手をとり、優位に進めていたが、出水中央も粘り強く点を返し、1点差のまま終盤を迎えた。
8回裏、6番・高野繁樹(3年)のレフト前タイムリーで同点に追いつき、9回は一死から9番・中部翔矢(3年)がエラーで出塁。ここまで打撃不振だった1番・福脇日向(3年)がセンター前ヒットでつなぎ、2番・野﨑皇汰主将(3年)が四球で満塁とすると、3番・宮田輝星(3年)はセンターの頭上を越えるサヨナラ打となった。
「ようやく、自分たちらしい野球ができました」と野﨑主将は振り返る。
「自分たちらしい野球」とは、投手を中心に守備から攻撃のリズムを作り、機動力なども生かして、1点差でも競り勝つ野球を言う。今大会、4回戦まで無失点、無失策と数字の上ではそれらしい野球にはなっていたが、内容的には「どこか緩んでいて、『冬眠』しているみたいだった」と荒木淳監督は言う。
相手は強豪・鹿児島実。気持ちの緩みようがないチームを目の前にして、「冬眠」から目覚めた。
エース溝口凌平(3年)は13安打を浴びた。ヒット性の当たりも含めれば20本以上は打たれていただろう。だが、気持ちがボールに入っていた分、要所をしのぎ、失点は序盤の3回までで、4回以降は本塁を踏ませなかった。エラーも9回に1つあったが失点にはつながっていない。
「しっかり声を掛け合って守れていた」(野﨑主将)。
「この桜のように、お前たちも冬やってきた成果を咲かせて欲しいね」
朝、出水から球場にバスで向かう途中、入来峠に差し掛かる手前にある清浦ダムで休憩をとった際に、荒木監督はそんな言葉をナインに発した。桜の名所で知られる場所は、大会中、毎回通るたびに花が開き、ちょうど満開を迎えていた。
「少しは自分たちらしい野球になっていたかな」
劇的な勝利にも関わらず荒木監督の評価は辛口だ。これまでに比べれば気持ちが入って勝負強くなかったが、終盤左打者に簡単にセーフティーバントを許したり、一塁線を簡単に破られたりと、ミスではないが気持ちの入っていないプレーがまだある。攻撃でもセーフティーバントを決めるなど、機動力の片鱗はみせたが、まだそれで相手を揺さぶって点がとれるところまではいってない。
「こんなところで満足してもらっては困る」
荒木監督の本音はそこにあるのだろう。「満開の桜」になるのは甲子園が決まってから。今はようやく「開花宣言」したところか。
(文=政 純一郎)