大島vs川内
「守備からリズム」で死闘制す・大島
12回の緊張した場面からマウンドに上がった渡秀太(大島)
鹿児島大島・前山優樹(3年)、鹿児島川内・福満圭大郎(3年)、両エースの好投と両チームの好守で互いに点が奪えず、0―0で延長戦に突入した。
12回に鹿児島大島は4番・渡秀太(2年)、5番・泉成海(3年)の連続タイムリーで2点を先取した。
このまま勝ち切るかと思われたが、その裏鹿児島川内が意地をみせる。二死二三塁から代打・東志恩(2年)が2点タイムリーを放ち、再び振り出しに戻した。
13回に内野ゴロと渡のタイムリーで2点を勝ち越し、その裏を9回からリリーフした渡がその裏を無得点で抑えて、3時間5分の死闘にケリをつけた。
3時間以上に及んだ死闘だったが、鹿児島大島・渡邉恵尋監督は「負ける気はしなかった」という。点はなかなか入らなかったが「守備からリズムを作る」(白井翔吾主将・3年)野球がシード鹿児島川内を相手にやり切れている手応えがあったからだ。
5回、先頭打者に長打を浴び、一死三塁のピンチ。捕手・上原勇人(2年)は「1ボールからのスクイズ」を読み、自分の判断でウエストしてスクイズを外し、飛び出した三走を刺して相手に先手を取らせなかった。
エース前山が9回二死から四球を出した。足がもつれていると察知した渡邉監督は、2年生左腕・渡にスイッチ。「無失点の3年生エースを替えるのは勇気が要った」(渡邉監督)が、継投はセンバツに出た前チームの頃から投手起用の柱にしてきた勝ちパターンだ。渡もその期待に応えて後続を絶った。
延長12回に2点を先取しながら、同点に追いつかれた直後の二死一二塁の場面では、上原が二塁けん制で刺し、サヨナラのピンチを脱している。二走が中途半端に飛び出していて「遊撃手の大山(竜生・2年)が呼んでいたので思い切り投げられた」上原の好判断だった。1点もやれないタイトロープを渡るような展開で、前山、渡が好投し、内外野1度もミスなく守り切れた。
「守備が安定していた分、終盤は攻撃でいろんなことがやれた」と渡邉監督。好機は再三作りながらも、相手左腕のキレのある変化球を打ちあぐねていたが、延長12回は3番・白井が意表を突くセーフティーバントで崩したことが4番・渡の先制打につながった。
13回、再び1点勝ち越した直後に四球で出塁した白井は、盗塁を決めて相手の守備を崩し、渡の適時打で貴重な4点目のホームを踏んでいる。長打力がない分「バントなどで揺さぶって点をとる高校野球らしい野球」(渡邉監督)で好投手を攻略した。
強力打線でセンバツを手にした前チームとは正反対のチームカラーだが、渡邉監督は「センバツ、九州大会、招待野球と、昨年1年間で先輩たちが積み上げた経験がこのチームの礎になっている」と確信できた一戦だった。
(文=政 純一郎)