試合レポート

世田谷学園vs都立荒川商

2015.03.23

相手指揮官も脱帽!三者連続スクイズ成功!

11人ながら健闘を見せた都立荒川商業ナイン

 世田谷学園都立荒川商の一戦は1点を争う好勝負に。なんとしてでも1点を奪い取る姿勢が上回った試合となった。

 1回裏、1番鈴木が四球、2番北山が死球で無死から一、二塁のチャンスを作ると、3番山名の犠打で一死二、三塁とすると、4番木下の犠飛で1点を先制。さらに3回裏には5番岡山将の内野ゴロと6番小川司の2ランが飛び出し、4対0と試合の主導権を握ったかに見えた。

 部員11人の都立荒川商が反撃。二死二、三塁から2番宮地の2点適時打、3番須田の適時打で4対3の1点差に迫ると、さらに7回表には9番小林が左中間を破る三塁打を放つと、1番五十嵐のスクイズ犠打で4対4の同点に追いつき、がっぷり4つの展開となった。

 都立荒川商は4安打ながらも、しっかりと点を絡めることができていた。そして9番小林が長打が放ったように、全体的に振れている。石川和也監督は、
「この冬は体力強化を課題において、体幹トレーニング、走り込みなどトレーニングを徹底的にやって、打撃を強化してきました。その成果が発揮できていると思います」
その成果が強豪校相手に発揮した。

 世田谷学園にとっては苦しい試合展開。成瀬智監督は今年のチームは打てるチームと評価しているものの、打てない時は小技を絡めて1点を奪い取るしかないと考えていた。7回裏、無死満塁のチャンスを作る。ここで打者は本塁打を放っている小川だった。小川は打ち気満々で打席に入った。だがこれはあくまでフェイク。小川はスクイズを試みる。見事にころがし、三塁走者が生還。勝ち越しに成功する。小川もセーフでなおも無死満塁。一塁に到達した小川は満面の笑み。
「スクイズは練習からやってきたことなので、それが実践できてよかったです」とコメント。1点を取るために必死に奪いにいき、確実にモノにする。小川のバントだけで終わりではなかった。続く町田、近藤も連続スクイズ。なんと三者連続スクイズで3点の勝ち越しに成功したのだ。


勝ち越しのスクイズを決めた世田谷学園ナイン

  これには都立荒川商の石川監督も、「スクイズ1つ、2つは来るかなと思っていたのですが、まさか3つとは。これが強豪校なんですね。勉強になりました」と脱帽だった。成瀬監督は、「打てない時にこのように小技を仕掛けることは、伝統的にやっていたことで、こういう場面を想定してのスクイズは徹底的に練習をしていました」と説明。

 

 打撃は水物。常に打てるわけではない。相手より1点多く取るには、何をするべきか。そのために小技を絡めていけるか。まさに駆け引きが優れた野球だった。小技を絡めると、小さくまとまっているように感じてしまうが、世田谷学園の選手たちを見ると、常にフルスイングをしており、力強い打球を飛ばしていた。特に本塁打を放った小川は、フォロスルーまでしっかりと振り切る打撃ができていた。小川はこれで2試合連続本塁打。長打力、小技を絡められるチームは怖い。

 3点を勝ち越した世田谷学園は、背番号20だが、エース格・岡山隼が右サイドから125キロ前後ながらキレのあるストレート、スライダー、カーブをコーナー自在に投げ分け、追い上げる荒川商業打線を封じ、試合終了。世田谷学園が本大会出場を決めた。1点を争う接戦の中、スクイズを絡めて点を奪い取った。これは自分たちの攻撃の引き出しを広げる自信になった試合だ。

 また7回に追いついた都立荒川商も、石川監督が「120パーセントの力を出せた。11人しかいないチームが強豪校と競り合いができたのは自信になる」と語ったように、双方にとっても収穫が残る一戦になったのは間違いない。

 

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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