二松学舎大附vs柏日体
11年ぶりのセンバツ甲子園へ、二松学舎万全の思いでいざ!
安定感抜群の投球を披露した二松学舎大附・大江竜聖君
今春、11年ぶりにセンバツ出場を果たした二松学舎大附。
とはいえ、昨夏にも悲願の出場を果たしており、チームとしては夏春連続出場となる。しかも、大江竜聖君、今村大輝君のバッテリーに、リードオフマンとしてチームを引っ張る三口英斗君ら、夏の経験者も多い。それだけに、浮足立つことなく、地に足をつけた形で甲子園へ向かうことが出来そうだ。前日には、大会の組み合わせも決まり、モチベーションもさらに上がっている。
その二松学舎大附の、甲子園出発前の最後の実戦調整である。いわば、壮行試合と言っていいものである。グラウンドのある千葉県柏市の強豪柏日体を招いてのものとなった。
二松学舎大附は注目の左腕大江君が先発。予定通りの3イニングを朏 仁矢(みかづき)君に許した左前打一本のみに抑えた。大会へ向けて、まずは順調な調整といっただろう。投球の安定感は抜群で、見ていても安心感がある。投球そのものに関しても、昨年夏の段階よりは、さらに幅が出てきている。このあたりは、マウンド経験によって自分の中でも自然に身についていったものではないだろうか。
市原勝人監督は、「少し球のスピードが出てきたことで、力で抑えようとしに行くところがあったのですが、自分の持ち味はスピードではないということを理解して、投球の組み立てがよくなりました」と、気持ちの部分での成長を評価していた。
二松学舎大附はさらに、右サイド気味の向山 雅夫君が2イニングを投げて、5番田中君の二塁打一本のみに抑えた。そして、何より市原監督が喜んでいたのは、岸田 康太君がいいリズムで投げられたことだ。
「まだまだ、もっとスライダーのキレもよくなっていくと思いますよ」と、望むところも高いが、いいリズムで自分のテンポで投げていた。岸田君のこの日の投球は制球がよくて、ポンポンとストライクで追い込んでいっていた。9回には先頭の1番津田君に二塁打されたものの、その後をしっかりと抑えて、ピンチにも慌てない落ち着きを見せていた。
こうして、3人の投手の継投でピシャリと完封して、二松学舎大附としてはいいムードとなった。
中日の佐藤充スカウトも注目する朏 仁矢君(柏日体)
午後からの試合も、梶井 一貴君が5イニングを投げたが、4回に真覚(まさめ)君の二塁打で逆転されたものの、5回に打者11人で5安打、二死急に失策も絡んで6点を奪いビッグイニングを作った。6回には橋本 雅弥君が右翼へ本塁打も放ち、振れているところをアピールしていた。
センバツを意識しながらも、帰ってきたらすぐに春季東京都大会が控えているということもあって、市原監督としても、より多くの投手を準備しておかなくてはいけないという意識もあった。だから、平山君、松島君と春季大会で使いたい投手陣もこの試合で起用していっていた。
高校野球は、限られた時間の中でやっていかなくてはならないことが多い。こうして、実績を上げていけばいくだけ、さらに当面の試合だけではないということも増えていくのだなぁということも、改めて感じさせられた。4月になれば、新入生も来て、スタッフとしてもさらにやるべき仕事も増えていく。そうした中で、夏を目指していくのが高校野球なのである。
なお、二松学舎大附のセンバツは、大会第5日松山東と対戦することになっている。
春季大会を目指してのチーム作りということで柏日体の金原健博監督は、「去年の夏のチームは、3年生が16人(ベンチメンバーに)入っていましたからね、今度のチームは経験がないんですよ。それを積ませていきながら、作っていかんといけないんですよ」と、言うのが現状のようだ。だから、これから春休みにかけては関西遠征なども組んでいきながら、チームを作っていくという方向性である。
「ウチは今は弱いですけれども、これから、伸びていきますから…」と、金原監督は選手たちへのノビシロを期待しながら、チーム作りへの手ごたえは感じているようだった。
エースとして予定している朏君については、この日も中日の佐藤充スカウトが見に来ていたのだが、「まだ、投げ込んでいない感じですけど、これから、もっとスピードも出てくるのではないでしょうか」と評価も高い。左腕の久住君とこの二人が投手の軸となっていきそうだ。
また、現在通算16本塁打というエドポロ ジョセフ君も、この日は2試合で4番に座り8打数1安打だったが、「(身長193cmという体格に合わせて)ちょっと、フォーム改造中」(金原監督)ということだ。最後にいい感じで左前打が出たことで、きっかけになりそうだ。こうした一つひとつの足し算もまた、チーム作りという点では欠かせないことでもあろう。
(文=手束 仁)