松島vs宮古商
東北大会の開幕戦は松島が勝利
「宣誓 東日本大震災から約3年半が経ち、東北各地で復興が進みつつあります。ですが、まだ、あの日を忘れることが出来ず、苦しみ、悲しみ、前に進むことが出来ない人たちがたくさんいることでしょう。私自身も苦しい思いをたくさんしましたが、今、こうしてここに立っていられるのは、たくさんの人々の支え、そして、希望があったからです。私たち東北の高校球児が出来ることは、東北全ての人々に勇気と笑顔、そして、希望を与えることです。私たちを見た全ての人たちが希望を持てるようなプレーをすることを誓います」
東北大会初出場の松島ベンチ
2011年春に予定されていた宮城での東北大会は、東日本大震災の発生により中止となった。2008年秋以来の宮城での東北大会は、開催地である宮城の第一代表・仙台育英の佐々木柊野主将の選手宣誓で幕を開けた。
開幕ゲームは、地元・宮城の松島対宮古商。松島は、宮城県大会で3位となり、今大会唯一の初出場チームだ。学校は全校応援を企画し、スタンドからは大声援が送られ、22名の部員を後押しした。対する宮古商は岩手県大会で快進撃を見せ、33年ぶりの出場だ。
試合は2回に動いた。先攻の松島は1死から四球の後、きっちり送って2死二塁とした。8番・五十嵐将太はサードゴロを打ったが、宮古商の三塁手・小笠原啓太の送球は高くなりセーフ。さらに、9番・佐藤光のセカンドゴロは二塁手・岩見俊太の手前で大きく跳ね、グラブをかすめて外野へ。松島はノーヒットで1点を得た。
松島エースの鈴木識史。3回に犠飛で追加点を挙げた
グラウンドはプロ野球・楽天の本拠地である[stadium]楽天Koboスタジアム宮城[/stadium]。岩手の選手たちにとっては、慣れない人工芝のグラウンドだ。
試合後に
「互いに同じ条件。言い訳にはならない」と宮古商・山崎明仁監督は話したが、[stadium]石巻市民球場[/stadium]などで普段から人工芝に慣れている松島と不慣れな宮古商との差はあっただろう。
松島・小原一志監督は「選手たちに緊張はあったが、初回の相手のエラーで、地元なので有利かなと切り替えができた」と話した。
さらに3回の松島の攻撃。この回、先頭の2番・渡辺悠太の打球はサードの手前でバウンドの弾み方が変わり、内野安打になった。四球と犠打で1死2、3塁とし、5番・鈴木識史の犠飛で2点目。さらに6番・賀屋幸之介のタイムリー二塁打で突き放した。松島は、5回には6本のヒットなどで4点を奪い、完全に主導権を握った。
一方、宮古商は5回までに2番・柳沢優大の二塁打1本のみと苦しい攻撃が続いた。6回を終えて0対7とコールド適応寸前だったが、7回裏、この回、先頭の5番・伊藤将大が左中間へ三塁打を放つ。その後、相手の送球ミスなどで、1死2、3塁とし、8番・岩見がライトへ待望のタイムリー。1点を返した。
マウンドに集まる宮古商ナイン
8回表の松島の攻撃を、この試合初めての三者凡退に抑え、コールド負けを逃れた宮古商。ところが、9回、またしても守備のミスが重なり、3点を失った。
試合は10対1で松島が勝利した。
5失策が響き、敗れた宮古商・山崎監督は
「守備の堅さで勝ち上がって来たが、ここという時のエラーが尾を引いた。いつもは『打球に対して前で勝負』と話しているが、人工芝だったので『待って勝負するのもOK』と話していた。しかし、中途半端な形での捕球になってしまった。選手たちは一生懸命やってくれたが、私の指導力不足」と話した。
地の利を生かした松島は、守備のミスもあったが、14安打と打力を発揮して大量得点。一挙に畳み掛ける“お家芸”で主導権を渡さず、東北大会での初勝利を上げた。
(文=高橋 昌江)