明徳義塾vs八頭
岸の温存に成功!明徳義塾が20得点で圧勝!
【勝ち越し打を放つ大久保 諒平選手(八頭)】
迎えた準決勝。
明徳義塾の先発は岸潤一郎(3年)ではなく、レフトを守る尾﨑 湧斗(3年)だ。尾崎がマウンドに登った事情はある規定が関係している。
変則ダブルヘッダーの規制
公式戦で、いわゆる準決勝と決勝を同日に行う変則ダブルヘッダーは原則として開催できない。ただし、天候などによる順延でやむを得ない場合は除く。なお、やむを得ず実施する場合は、投手が登板できるイニング数は両試合を通じて合計15イニング以内とする。2試合目も登板が予定される投手は第1試合後のアイシングはしないこと。
決勝戦で岸に完投させるには、なるべく登板させずに決勝に勝ち上がりたい。そのためにはどんどん打ち崩す必要がある。
明徳義塾は初回から点を先行する。四球3つで無死満塁のチャンスを作り、4番岸は押し出し四球で、まず1点を先制する。一死満塁とし、6番水野 克哉(3年)は敵失で、1点を追加。さらにワイルドピッチで、3対0とする。
だが八頭も明徳義塾の先発・尾崎に襲いかかる。1番西原 朋哉(3年)が左中間を破る二塁打、2番大基 雄久(2年)の犠打で一死三塁。3番中尾 直也(3年)の中犠飛で1点を返し、3対1。
さらに3回裏、1番西原の中前安打、2番大基の左横線二塁打で無死二、三塁のチャンスを作り、3番中尾が右前適時打を放ち、3対2。4番大久保 諒平(2年)が右中間を破る適時三塁打を放って、4対3と逆転に成功。さらに二死二塁から6番竹内の中前適時打で5対3とさらに点差を広げる。
【好投を見せる安田孝之(明徳義塾)】
だが明徳義塾はこのままでは終わらなかった。4回表、8番大谷 勇希(3年)の中前安打、9番大西 主将(3年)の内野安打、1番多田 桐吾(3年)は敵失で無死満塁のチャンスを作ると、2番尾崎が右前適時打(敵失で尾崎は二塁へ)で同点に追いつく。なおも無死二、三塁となって、3番西岡 創太(3年)の右犠飛で勝ち越しに成功。二死三塁から5番安田 孝之は敵失で7対5と点差を広げる。
そして5回表にも、二死一塁から1番多田の右中間を破る適時三塁打で1点を追加し、2番尾崎の中前適時打で1点を追加。3番西岡の右前安打で、二死一、三塁になった後、4番岸が右中間を破る適時三塁打を放ち、さらに2点を挙げ、11対5と大きく点差を広げる。
火が付いた明徳義塾打線はその後も勢いが止まらず、計20安打20得点の猛攻で、粘る八頭を振り切り、20対6で大勝した。
この試合で大きかったのは、岸が投げずに勝てたこと。先発の尾崎は3回で降板してしまったが、4回から登板したショートの安田が常時130キロ~135キロの直球、スライダーを投げ分け、八頭打線を6回1失点に抑える好投を見せた。
両投手の投球に対し、ライト、またはショートで見守っていた岸は
「尾崎、安田の2人が粘り強い投球をしてくれたおかげで、僕は投げずに済んだ。決勝戦は自分がやるだけです」
決勝戦を1人で投げ抜く覚悟は固い様子だった。
この2人の好投により、岸は全ての力を決勝戦に注ぐことが出来るようになった。決勝戦を想定すると、内容面では大きな収穫のある一戦であった。
(文=河嶋宗一)