健大高崎vs東海大四
勝負は後半!健大高崎が7盗塁を絡め、13得点!乱打戦を制する
【東海大四の先発・西嶋亮太
非常に走りにくい投手として警戒していた】
どこで機動力を発揮するのか。健大高崎はその場面を理解しているように感じた。
東海大四の先発・西嶋 亮太(3年)。今夏の甲子園ではスローボールが注目された投手だが、1.1秒の高速クイックに加え、牽制の巧さもある。
健大高崎の青柳監督も、「走りにくい投手ですよね」と警戒。さらにこの試合は立ち上がりから劣勢に立たされる。
1回裏に3番福田 涼太(3年)の適時打、3回裏には5番阿部 佳志(3年)の2点適時二塁打で東海大四に3点を先行される。
投手はリードすれば、優位に投球を組み立てるものである。自慢の機動力を発揮するのは難しくなる。
この場面で突破口を切り開いたのがドラフト候補・脇本直人だった。第1打席で空振り三振に倒れていた脇本。4回表に回ってきた第二打席で外回りなスイング軌道を修正して、打席に臨み、振り抜いた打球は右中間を破る三塁打となった。
それにしても素晴らしい勢いのあるベースランニングだった。また夏に比べて、より身体が鍛えられている。18Uが終わった後でも怪我をしない身体作りに努め、上半身、下半身をバランス良く鍛えている期間だという。プロで野球をやる自覚が彼にはある。
続く4番長島 僚平(3年)の四球で、無死一、三塁とすると、5番柘植 世那(2年)が右中間を破る三塁打を放ち、3対2の1点差に迫ると、さらに敵失の間に同点に追いつく。さらに5回表にも、一死二塁から脇本がライトの頭を越える三塁打を放ち、勝ち越しに成功。
脇本の打撃はシンプルだ。
「来た球だけを打っています」
ノーステップから踏み出し、手元ギリギリまで引きつけて振り抜く打撃スタイルで、甘い球を見逃さずに打ち返すことが出来ていた。
脇本は5番柘植の適時二塁打で生還。二死一、三塁となって、7番中筋 天馬(3年)の時にダブルスチールを仕掛け、三塁走者の柘植が生還し、この回3点目を追加し、6対3と点差を広げる。
【突破口を切り開いた脇本直人(健大高崎)】
勢いづいた健大高崎打線は6回表、7番中筋の本塁打で1点を追加すると、一死二塁から1番平山 敦規(3年)がセンター越え三塁打で、さらに1点を追加。2番星野 雄亮(3年)のセーフティスクイズで、平山が生還。出塁した星野はさらに盗塁を仕掛ける。送球ミスの間に星野は三塁まで陥れた。まだこれで終わりではなかった。星野は相手野手の緩慢な動作を見逃さず、一気に本塁へ生還した。
送球ミスの間で、三塁まで陥れることはよくケースだが、東海大四が見せた隙は普通のチームならば、まず本塁へ陥れないものである。僅かな隙を逃さない。これが健大高崎の走塁である。この回、4点を入れて10対3。徐々に自慢の機動力を発揮してきた。
この日の健大高崎は打って、打って、逆転に成功。
一方で、リード時は平常心で投球をしていた西嶋と守っていた東海大四守備陣だったが、リードされてからは汲々とした状況でプレーをしていたのが見えた。
健大高崎はそれを逃さなかった。今年の機動力をキーマンである平山は「前半は難しいと思っていました。捉え出した後半が勝負だとチーム全員思っていたので」と振り返るように、むやみに仕掛けるのではなく、勝負所を理解していたといえるだろう。
その後も足を絡め、終わってみれば、16安打13得点7盗塁。健大高崎が掲げる『機動破壊』を存分に発揮した試合だった。
一方、敗れた東海大四だが、7回裏には今川 優馬(3年)の2点本塁打、8回裏には途中出場の高野 裕真(3年)の適時打、9回裏には4番大河内 航(3年)の2点本塁打など終盤で7得点を挙げ最後まで粘りを見せた。
健大高崎は4投手の継投リレーで凌ぎ、13対10と乱打戦を制し準決勝進出を決めた。
足は実戦感覚が失われると最も影響を受けやすいのだが、それを微塵も感じさせない見事な機動力だった。
青柳監督は、「3年生たちは夏の甲子園が終わっても、1、2年生と交じってフルメニューに参加していたので、足が動いていました。自分の持ち味を発揮することができましたね」と大会が終わっても常に練習に参加してくれたことを明かしてくれた。
まずは国体で、夏に辿り着けなかった日本一を目指して、駆け回る。
(文=河嶋宗一)