明徳義塾vs沖縄尚学
【サイクルヒットを達成した岸潤一郎(明徳義塾)】
岸潤一郎、サイクル安打達成!明徳義塾が10得点で快勝!
明徳義塾vs沖縄尚学。
試合前、明徳義塾のエース・岸潤一郎と沖縄尚学のエース・山城大智の投げ合いになるかと思われたが、明徳義塾打線が爆発し、山城を攻め立て、序盤から試合の主導権を握った。
1回裏、一死から2番多田 桐吾(3年)は四球。3番西岡 創太はスライダーを捉え、左前安打。一死一、二塁から岸が打席に立った。実は岸、山城にこんな約束をしていた。
「あいつ(山城)とは、打たれるまでお互い直球勝負をしようと。狙い通りの直球が来ました」
ストレートを振り抜き、打球は左中間を破る三塁打となり、一気に2点を先制する。岸はさらに安田 孝之の内野ゴロの間に3点目のホームを踏み、初回に明徳義塾が3点を先制する。狙い通りの直球を打ち返した岸。ちなみに山城も第1打席で岸の直球を打ち返して中前安打を放った。勝負はおあいこということで良いだろう。
2回表、沖縄尚学は上原康汰(3年)が右翼席に飛び込む豪快な本塁打を放ち1点を返すが、3回裏に岸が左翼席へ飛び込む豪快な本塁打を放ち再びその差を3点とする。
岸はこの打席について聞くと
「さっき直球を打ち返したので、捕手は変化球のサインを出すと思いました。そして狙っていた変化球が真ん中に入ったので、迷わず振り抜きました」
会場である[stadium]長崎県営野球場[/stadium]は両翼99.1メートル、中堅122メートル。フェンスは3.9メートルと高校生では本塁打にするには難しい球場だが、大きな球場を物ともしない豪快な本塁打であった。
さらに岸は5回裏、一死一塁の場面で、第3打席を迎える。初球を捉え、左中間を破る二塁打を放ち、3打数3安打。三塁打、本塁打、二塁打。残りはシングルヒットでサイクルヒット達成である。
これには本人も「出来過ぎ」と振り返るぐらい、素晴らしい打撃だった。この後、安田の適時打が飛び出し、5対1と突き放す。
【勝利を決め笑顔で集合する明徳義塾ナイン】
7回裏、岸に打席が回ってきたが、読みがなかったフォークで空振り三振。これでサイクル安打はないと思われたが、8回裏、明徳義塾は4点を追い上げ、9対1と8点リード。二死三塁の場面で岸に再度打席が回った。
国体は点差によるコールドはないため巡ってきた打席だ。こういう打席が巡ってきただけでも幸運といえるだろう。岸は変化球に必死にくらいつき、中前安打を放ち、サイクル安打を達成した。今まで岸については投手として取り上げることが多かったが、野手としても素晴らしいパワーを秘めている。この打球を木製バットに切り替えても飛ばすことが出来れば、野手・岸でも面白いのではないか。
岸は打ってはサイクルヒット。投げては最速141キロのストレートに加え、カットボールを織り交ぜ、9回1失点完投勝利で、明徳義塾が2回戦進出を決めた。
岸は「何とか1回勝てればと思っていて、そしてサイクル。もう十分なんじゃないかと思います」と振り返った。
国体はどんな気持ちで臨んでいるかと聞くと、
「もう甲子園のようなガチガチの重圧はありませんから。楽しく野球が出来ていますね。それはみんな同じだと思います」リラックスした心境が今日のような大記録を作ったのかもしれない。
国体は規定によりあと2日間の開催だが、岸は国体を観ている野球ファンをどれだけ楽しませることができるだろうか。高校最後の勇姿に期待が集まる初戦となった。
(文=河嶋宗一)