市立川越vs聖望学園
市立川越、指揮官もビックリのコールド勝ち
先制の適時打を放った池田君(市立川越)
この夏埼玉大会で決勝進出、川越商時代の1989(平成元)年以来の甲子園出場に手が届きかかったが、春日部共栄に屈した市立川越。しかし、新チームも夏季新人大会西部地区大会でベスト4に進出した。チームの勢いはそのまま引き継がれている。ところが、その西部地区新人大会の準決勝で、敗れた相手が聖望学園だった。その両者が、県大会初戦でいきなりぶつかることになった。
そういう意味では、注目の一戦であり、県大会初戦屈指の好カードと言ってもいい。今大会のシード校となっている聖望学園に市立川越が挑むという形になった。
結果は、まさかの市立川越のコールド勝ちとなった。
「いや~、オレもビックリしてるよ。勝てるとしたらロースコアゲームだと思っていたんですよね。コールドで負けることはあっても、勝つとはねぇ」と、新井清司監督もむしろ出来過ぎの内容に驚いていたくらいだ。
「8月までは、どうせ打てないだろうと思っていたので、打撃練習もあまりしていなかったんですよ。そうしたら本当に打てなくなっちゃったもんだから、これは困ったと思っていたんだけれどもね」と、話していたが、この日の市立川越の攻撃は素晴らしかった。
3回の市立川越は8番の前村君が内野安打で出ると、宮崎君がバントで進め、1番池田君の右前打で先制のホームイン。ソツのない攻撃を見せた。さらに、4回にも、2死走者なしから、原田君が右越三塁打すると、前村君は死球で一三塁となる。ここで一塁走者の前村君は「どうせ打てないのだから、挟まれてもいいから走れ」という盗塁のサインだったが、これが成功して二三塁となる。すると、打てないはずの宮崎君がしぶとく中前へはじき返して、2者を迎え入れた。
聖望学園の岡本幹成監督は、ここで先発中村君を諦めて、右サイドの松本君を送り出した。しかし、ポテン安打と連続四球で押し出し。失策もあって、この回4点が入った。
フォームのまとまっている市立川越・登坂投手
5回にも、市立川越は右越二塁打で出た野原君をバントで進めて、原田君のスクイズで帰した。そして、6回にも1死二三塁で暴投と、布沢君の左前打で7点差となった。
新井監督は、「コールドなんて意識していなかったから、気がつかなかったくらいだよ。布沢がヒット打って点が入った時に点差を見て、あっ7点差になっているじゃないかと思ったくらいですよ」と、笑って見せた。
打線としては、準優勝した夏のチームよりも破壊力はなくても機動力はある。エースの登坂君は、5回のように少しフォームが早くなってリズムを崩しても、試合中に修正できる能力がある。基本的には、制球がいいので安定感がある。昨秋も準優勝で、関東大会進出を果たしたが、この秋も市立川越はひと暴れしそうな勢いだ。旧チームが2度、県準優勝を果たしているということも、着実にチームとしての自信になっているようだ。
1~3回まで、毎回三塁まで走者を進めていた聖望学園だったが、先取点を奪えなかったことが結果的には効いてしまった。
岡本監督はベンチから、例によって関西弁で、「見とったらあかんやろ!どんどん行かな、思い切って向かっていかなあかんで」と、積極的に行くように檄を飛ばしていたが、結局5回に押し出しで挙げた1点のみで、登坂君を攻略しきれなかった。
素材力としては高い評価を受けている田島君も三番手として投げたが、連続で四死球を与えるなど、制球がバラついていた。聖望学園としては、来年へ向けて、課題が多く見つかった試合となった。
(文=手束 仁)