桐朋vs日本ウェルネス
春の常連・桐朋が2003年以来の秋都大会出場掴む!
タイムリーに笑顔の渡邊(桐朋)
桐朋高校西グラウンドで行われた、第16ブロック代表決定戦。第2試合は、春は常連ながら秋はベスト8に進出した2003年以来久しぶりの都大会出場を狙う桐朋と、2回戦で都立拝島を4対1で下し、チーム創設以来初勝利を挙げ勢いに乗る日本ウェルネスの対戦。伝統校と新進校の対戦は、試合後の両監督から「野球は守りから」とコメントが出る通り、守備がポイントを分ける展開となった。
試合は初回表、桐朋がまず動かす。二死一塁から4番・古川がヒットで、5番・髙山が四球を選び出塁し、二死満塁のチャンスを作り出す。続く打者はこの試合先発も務める6番・仲二見。仲二見はセンターへ2点タイムリーを放ち、桐朋が先制する。さらに二死二、三塁のチャンスで、打席には7番、キャプテン渡邉。ここで、立ち上がりから落ち着かない日本ウェルネスバッテリーにワイルドピッチが出て1点を追加。なおも二死三塁となり、渡邉はこの後センター前へタイムリーを放ち、桐朋が初回に4点を先制する。
しかし、日本ウェルネスもその裏、すかさず反撃を見せる。エラーで出塁した1番・大河原をバントとヒットでじわりと三塁へ進めると、一死三塁から4番・迫川の二塁ゴロの間に本塁へ。1点を返す。
桐朋は3回にも日本ウェルネスのエラーを見逃さずに1点を追加。5対1とリードを奪うが、その後あと1本が出ずになかなかチャンスを生かせない。
5回裏、ここまで耐えていた日本ウェルネスがその牙を見せる。
二死から9番・迫がセンター前へのヒットで出塁。続く打者は、日本ウェルネスのキャプテン、1番・大河原。右中間へ外野の頭を超える二塁打を放ち、迫は一塁から一気に本塁へ。1点を返し、なおも二死二塁。続く2番・水上の当たりはセンター前へ。二塁走者の大河原は迷うことなく本塁へと駆ける。ボールは本塁へとやや逸れて還るも、大河原はタッチをかいくぐってホームを踏み、この回2点目。5対3とし、桐朋に迫る。
続く打者は、初回にヒットを放ち、第2打席でも桐朋ライト・髙山のファインプレーに阻まれたものの良い当たりを飛ばしている3番・原。原が弾きかえした打球は、一塁への強烈なゴロ。これを桐朋ファースト・古川が落ち着いて処理し、3アウトチェンジ。
「ここでもう1点取られていたらわからなかった。選手も動揺していたと思う。」と桐朋の田中隆文監督が試合後語ったように、桐朋ナインは胸を撫で下ろした。そして日本ウェルネスには悔しいプレーとなった。
先発した仲二見(桐朋)
ピンチを切り抜け、逆に6回にもエラーで出塁、進塁した走者をスクイズで還し1点を追加した桐朋は再び勢いを取り戻す。
7回表、一死から7番・渡邉がヒットで出塁し、すかさず盗塁を決める。続く8番・宇佐美はセンター頭上を越えるタイムリー二塁打を放ち、追加点をあげなおもチャンスは続く。9番・鈴木、1番・長谷川が連続で四球を選び一死満塁。ここで2番・酒井が放ったのはショートへの強いゴロ。打球はグラブを弾きショートの足元へと落ちる。体勢を立て直し拾い上げるものの処理を焦ったか、一塁への送球がそれてしまう。これを見逃さない桐朋は三塁走者はもちろん二塁走者も還り2点を追加。続く3番・石元はセンター前へタイムリーを放ちこの回4点。10対3とリードを広げた。
後がない日本ウェルネスだが、仲二見が7回裏をキッチリ3人で打ち取り試合終了。桐朋が7回コールドで勝利し、都大会出場を決めた。
日本ウェルネス美齊津忠也監督は「もちろんチャレンジャーだという気持ちで挑みましたけど、やっぱり桐朋さんは強かったです」と試合を振り返った。
公式戦初勝利となった2回戦では、相手を1点に抑えるなど守備がしっかりできていたとのこと。この試合は守備の乱れからの敗戦と、課題が浮き彫りになった形だ。だが、公式戦初勝利を挙げたことで、一つ扉をこじ開けることが出来た大会となった。
「これからの課題は、守備に限らず全てにおいてスペックを上げていくことです。今いる部員11名全員で背伸びをせずに、自分たちの出来ることを一つ一つやっていきたいですね」と、春に向けて前を向いて、また一歩ずつ進んでいく。
勝利した桐朋の田中監督は少しホッとしたような表情を見せた後「ヒヤッとしました」と笑い、2003年以来の秋季都大会出場を決めた新チームについて語った。
「選手たちは、『自分たちは弱い』と思っている。それは一歩間違えれば危ないのだけれど、自分たちより強かったのに秋の大会に出られなかった3年生の姿を見て、何かを感じて、より気持ちを込めたのかもしれませんね。そう思うことで、しっかりと確認がとれていたりして、まとまっているんだと思います。都大会まで期間があるのですが、練習は基本的なところを反復して出来ることをしっかりやっていく。特別なことは考えていません。全員で戦っていきます。」
長らくそびえていた、秋のブロック予選の壁を打ち破った桐朋ナイン。「弱い」からこそのまとまり、結束力で、同じく都大会に出てくる猛者たちに挑む。
(文=青木有実子)