都立墨田工vs大成
先頭打者初球本塁打の墨田工、その勢いで再逆転で都大会進出果たす
先頭打者本塁打を放ちゆっくりと本塁へ向かう山瀬君(墨田工)
試合開始の第一球をいきなり叩いた都立墨田工の山瀬君の打球は、そのまま91mの左翼柵を越えて鮮やかな先頭打者本塁打となった。その勢いは衰えず、2回に一度は逆転されても、すぐに再逆転。その後を見事にハマった継投で乗り切って、秋季東京都大会の本大会進出を果たした。
「少なくとも、ボクの記憶では(秋季大会出場は)ないと思います。ボクが来てからも、秋はブロック予選での勝ちもなかったくらいですから…」と、中島豊雄監督が言うくらいに、都立墨田工としては嬉しい本大会進出となった。
先頭打者本塁打の1点を貰った、都立墨田工の先発斉藤俊君だったが、2回に東京大成打線に掴まった。
この回、東京大成は1死から6番鈴木君が死球で出ると、続く黒澤君が会心の一打で中前へはじき返して一二塁。内野ゴロで2死二三塁として、失策で同点。さらに、四球後黒川君のドン詰まり気味の打球が内野安打となり、送球もそれる間に、2者が帰ってこの回3点。
しかし、都立墨田工の元気は衰えなかった。3回は1番山瀬君からだったが、一二塁間を破って出塁すると、南木君のバントが安打となり無死一二塁。小林君が送って1死二三塁。4番西村君が三遊間を破って1点差として、なおも一三塁。武藤君が四球で満塁となると、6番上島君が中越の三塁打を放って走者一掃。
自身も本塁を狙って、ここは刺されたものの、積極的に走ってもいいというベンチの指示もあり、思い切って走っていった姿勢は、結果はともかくとして意識としてはよかったのではないだろうか。
こうして、逆転した都立墨田工は、その裏、先頭打者に四球を与えると、中島監督は思い切ってスパッと永瀧君にスイッチした。
これが成功して、後続をきっちりと抑えた。そして、試合そのものも、その後は永瀧君と、4回からマウンドに登った東京大成の池島君との投げ合いという展開になっていった。
好リリーフをみせた永瀧君(墨田工)
永瀧君は、球威があるというタイプではないものの、4~5回にかけて4連続三振を奪うなど、持ち味の変化球の制球がよく、特にスライダーがきちんと低めにコントロールされていた。自分の投球リズムを作ることが出来るので安定感がある。
一方、東京大成の二番手池島君も丁寧に投げていた。7回に9番古谷君にタイムリー打されて1点を失ったものの、そこまでの3イニングはバント安打一本のみに抑える好投だった。
そして、7回裏に代打を送った関係で、8回からは東京大成の五島徹也監督は3人目の多田君を送り込んだ。東京大成は7回に、失策絡みで1点を返したものの、結局追いつき切れなかった。中盤以降、池島君と多田君が踏ん張っただけに、何とかしたいところだったのだろうが、ついぞ永瀧君を攻略しきれなかった。
都立墨田工は、中島監督が愛知の中京大中京出身で、現中京大中京の高橋源一郎監督と同級生でもある。その関係で毎年、天下の名門と練習試合を組んでいるのだが、この夏休みにも愛知遠征で中京大中京の胸を借りた。
「もちろん、ボコボコにされて帰ってきたのですけれども、それでも、強い打球に対しての対応とか、あれより強力な打線もそんなにあるわけではないですから、そういう意味では、何かは得られたと思っています」と言うように、貴重な経験を積みながらこの秋を迎えた。
そして、その成果が一つ出て、本大会進出を勝ち取った。
「これからまだ、1カ月くらいありますから、もう一回チームを作って行けると思います」と、中島監督としても初めての経験となる秋季大会の本大会へ希望を膨らませていた。
(文=手束仁)