試合レポート

都立小山台vs成立学園

2014.09.14

都小山台、成立学園に逆転勝ち、勝負を分けたアピールプレー

都立小山台vs成立学園 | 高校野球ドットコム

曳田 敦志(成立学園)

 秋季大会の第12ブロックBの5校の中には、前年秋優勝関東一優勝成立学園センバツに21世紀枠で出場した都立小山台と、強豪が集まった。「何でこんな組み合わせになったのかね」と、都立小山台の福嶋正信監督が思わず愚痴るのも、十分にうなずける。

 都立小山台成立学園の試合は、強豪対決の第1弾だ。試合会場は[stadium]江戸川区球場[/stadium]。観客も多く、試合のレベルも高く、ブロック予選ではなく、都大会の雰囲気そのものだった。

 まず気になったのは、都立小山台伊藤優輔成立学園木寺凌世という、絶対的なエースが退き、新チームはどのような投手陣で臨むかということだった。

 成立学園の先発・曳田 敦志は、春季都大会決勝などですでに経験を積んでいる右の本格派。都立小山台の吉岡は、小柄な左の左腕で、サイドに近い、アンダースローの投手だ。

 1回裏成立学園は、3番田村の四球、4番藤谷 耕平の左前安打で二死一、二塁のチャンスに5番栁谷が左前に流し、田村が生還して、先取点を挙げた。

 吉岡としては、不安な立ち上がりになったが、2回以降は低めに決まり出し、東海大四西嶋 亮太のような山なりではないものの、時おり超スローボールを投げるなど、緩急をつけた投球で、成立学園打線をかわした。吉岡は、三振をとるような投手ではないので、甲子園を経験した吉田 龍平捕手のリードや、バックの好守備で、吉岡を支えた。

 成立学園の曳田は、力のある球をテンポ良く投げ、都立小山台打線を翻弄。4回まで無安打。5回に7番長南が初安打を記録したが、これは内野安打だった。

 それでも都立小山台は、打てないなりに何とか出塁しようという執念をみせる。
それがまず実ったのが、6回表。一死後、2番清水のバントは内野安打になる。続く吉田の三ゴロの間に進塁したものの、4番志村 優十茂は平凡な二ゴロ。ところが二塁手の一塁への送球がそれ、その間に清水が生還し、同点に追いついた。


都立小山台vs成立学園 | 高校野球ドットコム

竹下 直輝(都立小山台)

 ところが7回裏、成立学園は先頭の7番山田茂が左前安打で出塁すると、8番萩原のバントは内野安打、9番曳田のバントは失策となり、無死満塁。そこで1番小山の右犠飛でまず1点勝ち越し。なおも続く一死一、三塁の場面で、2番坪井も右飛。三塁走者も生還して、成立学園が貴重な2点リードを奪ったかにみえた。
ところが、三塁手の竹下 直輝が、三塁走者の離塁が早いことをアピール。これが認められて、得点は入らず、チェンジとなった。

 1点差と2点差では意味合いが大きく違う。竹下のアピールは、試合の流れを決定づけるプレーになった。「公式戦に強いのですよ」と、福嶋監督は目を細める。

 今春のセンバツで、9回二死、あと1人で無安打無得点に抑えられるという場面で代打に出て、唯一の安打となる内野安打を記録したのが竹下だった。もともと外野手であったが、三塁にコンバートされ、この試合でも、再三好守備をみせていた。

 センバツ出場は、伊藤優輔の功績が大きいのは確かだ。そして本番では履正社に完敗したが(試合レポート)、大舞台を経験したことは、後輩たちにも財産になった。

 試合の流れが都立小山台に移った8回表、安打で出塁した1番風間 航、3番吉田が進塁し二死二、三塁。ここで5番木田 輝が中前安打を打ち、2人が生還して、都立小山台が一気に逆転した。得点に絡んだ、風間、吉田、木田の3人は、2年生ながら甲子園を経験している。

 9回裏成立学園は、先頭の6番石井が二塁打で出塁し、バントで送られ、一死三塁となったが、続く8番萩原のセンターへの低いライナーを中堅手木田が好捕。結局3対2で都立小山台が接戦を制した。

「吉岡が悪いなりによく投げてくれた」と都立小山台の福嶋監督。絶対的なエースがいなくなった後も、小さなエースをチーム全体で盛り立てる、新しい都立小山台の姿をみせた貴重な勝利であった。もっともまだ関東一などが待ち構えているだけに、この1勝は、厳しい戦いの始まりに過ぎない。

 成立学園は、投打ともに高いレベルのチームである。ただ守備面や試合運びの面で、やや問題が露呈した。成立学園は、昨年の秋もブロック予選の初戦で敗れながら、は都大会を制している。
こうした強豪が、他校の目にあまり触れることなく早々に敗れたことは、むしろ脅威になるかもしれない。そんな力を秘めたチームである。

(文=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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