貝塚南vs堺上
勝負を分けた外野手の判断
力投する川端康功(貝塚南)
メンバー表に記された貝塚南のベンチ入りメンバーは17人だった。
大阪府予選におけるベンチ登録メンバーは最大20人。貝塚南の部員数は多くは無いがそれでも20人は超えている。しかし小川監督は「夏は人数勝負的なことありますけど」と前置きした上で「20人いても動こうとしない子もいる。ベンチで必要な動きがわかっている子を入れる」という方針で試合に臨む。実際、昨年秋もベンチ入りは16人だったという。
人数的には不利な貝塚南だったが一歩も引かず、試合は貝塚南・川端康功(2年)と堺上・中前皓右(2年)の投げ合いで非常に似たような展開で進んだ。
2回、貝塚南は二死三塁で川端が、堺上は二死一、三塁で中前が空振り三振。3~6回までは共にフォアボールでランナーを出しただけでヒットは生まれず。7回に貝塚南が二死一、三塁と絶好のチャンスを作るが三塁ランナーがワンバウンドした投球に飛び出してしまい、三本間に挟まれタッチアウト。堺上は一死二塁から右中間へのフライで二塁ランナーが飛び出してしまい、帰塁出来ずに併殺を喫する。
8回の攻撃を共に三者凡退で終え、延長戦が目前に迫った9回、貝塚南は先頭の愛甲がセンター前ヒットで出塁すると、相手の送球ミスで二塁に進む。
一死後、川端とバッテリーを組み堺上のスコアボードに0を8つ並べ続けた川島広大(2年)が「とりあえず来た球は全部振ろうと思ってました」と打席に入ると2ストライクと追い込まれながらもレフトオーバーのタイムリーツーベースを放つ。
さらに北野晃河(2年)にもタイムリーが飛び出し2点目を奪うと川端が自らのバットでセンターオーバーのタイムリースリーベースを放ちトドメ。8回まで3安打だった打線が9回に4安打を集中させ試合を決めた。初めてリードした状態でマウンドに上がった川端は1点を失うも被安打3、9奪三振で完投。新チームに初勝利をもたらした。
先制のタイムリーを放った5番・川島広大(貝塚南)
最後に投打が噛み合う形となった貝塚南だが、ほんのわずかな差で勝敗は逆転していた可能性がある。
決勝打となった川島のレフトオーバーは堺上のレフトがいったん前進してから慌ててバックしたものであり、川端のセンターオーバーに対してのセンターの打球判断も鋭いものではなかった。捕れば好プレー、ファインプレーには違いないがどちらも捕球出来る可能性のある打球だった。
堺上は他の部活とグラウンドを共有しており平日に外野フライを練習することは不可能で、土日でも1面を使えることは稀だという。
「しんどい試合で負けてしまったんですけど1点返せたのは大きい」と敗戦の中にも手応えを感じていた塩田監督、もし仮に環境面が整っていればその1点が決勝点になっていたかもしれない。記録に残らない小さな判断ミスが勝敗を分けた。
(文=小中翔太)