敦賀気比vs八戸学院光星
分厚い打線とエースの力投で敦賀気比が19年ぶりにベスト4へ進出
一見すると同じような立ち上がりだった。
敦賀気比の先発・平沼翔太(2年)と八戸学院光星の先発・呉屋開斗(2年)は4人の打者との対戦を終えた時点で、どちらも二死一、二塁のピンチを背負う。
しかし、5番打者との対戦結果は正反対、それがそのまま試合の流れを大きく左右した。
平沼が八戸学院光星の5番・新井勝徳(3年)から三振を奪い無失点で切り抜けたのに対し、甲子園初登板となる呉屋は敦賀気比の5番・峯健太郎(3年)にレフトスタンド中段に突き刺さるスリーランホームランを浴びる。
福井大会で新記録となる.438というチーム打率を残した敦賀気比、その打線の勢いは甲子園でも健在で3回戦まで全ての試合で2桁得点を挙げていた(1回戦・対坂出商試合レポート、2回戦・対春日部共栄試合レポート、3回戦・対盛岡大附試合レポート)。
歴代の中でも福井最強の打線がいきなり呉屋-馬場龍星(2年)の2年生バッテリーに襲い掛かった。
敦賀気比が2回にもヒットとデッドボールで無死一、二塁のチャンスを作ると、八戸学院光星の小坂監督は八木彬(2年)をマウンドに送る。
ベンチの思惑よりも早めの継投を強いられた八戸学院光星だがこのピンチは八木が起用に応え4点目のホームは踏ませない。
それでも敦賀気比の攻勢は続く。
3回には鋭い当たりがライナーゲッツーとなり得点には結びつかなかったが一死一、三塁のチャンスを作り、4回には先頭の山本皓大(2年)がヒットで出塁すると、送りバントと進塁打で三塁に進め、2番・下村 崇将(3年)のタイムリーで1点を追加。
5回にも御簗翔(3年)のあと少しでホームランというセンターオーバーのタイムリーツーベースと山本の右中間へのタイムリースリーベースでリードを広げ、八木を攻略。
2試合連続で完投していた八戸学院光星のエース・中川優(2年)をマウンドに引きずり出す。
先発を任された呉屋は長い手足から130キロ台中盤のストレートを投げ込む左腕で、2回からリリーフした八木はいかにも重そうな140キロオーバーのストレートが武器。
八戸学院光星の小坂監督からすれば呉屋と八木である程度試合を作って欲しかったに違いないが、敦賀気比打線がそれを許さず、中川も代わり端に敦賀気比の9番・中本貴大(3年)にタイムリーを浴びる。
八戸学院光星は打線がわずか1安打に抑えられている間に7点のビハインドを背負ってしまった。
着実に得点する打線の援護を受けた敦賀気比の平沼は3回戦までの疲れを全く感じさせず好投。
スライダーやチェンジアップも有効な持ち球だが最大の武器は威力あるストレート。アウトコースへのコントロールも良く、終盤になっても球威が衰えたり球が浮いたりすることなく被安打4、奪三振10で2失点完投。
2試合連続で逆転勝利を収めてきた八戸学院光星打線をまったく寄せ付けなかった。
敦賀気比打線は、福井大会から数えればこれで9試合連続2桁安打。
上位下位関係なくバットが振れており安打数や本塁打数が注目されがちだが、7得点を挙げた5回までに送りバントを3つ決める丁寧さも併せ持つ。試合全体では5つのバントを成功させ失敗は0。しかも決めたのは全員違う選手。
どの打順でも大技小技が使えこの日は無安打だったものの7番・平沼は打っても長打力を秘め、8番・山本は3安打、9番・中本もタイムリーを放つなど打順に関係なく常に攻勢を仕掛けられるのが強み。
分厚い打線とエースの力投で福井代表・敦賀気比が青森の強豪・八戸学院光星を下し、19年ぶりにベスト4へ進出した。
(文:小中翔太)
【僕らの熱い夏】第72回 八戸学院光星高等学校(青森)
3年生全員の力を結集させ、この夏も必ず甲子園へ出場します!今春に引退した台湾からの留学生蔡 鉦宇君の思いと一緒に、私たちを支えてくださっている方々に感謝の意を込めて「勝ち」にこだわっていきたいです!!