敦賀気比vs春日部共栄
「満足感」を打破せんとした初回の明暗
恐らくこの数日間、春日部共栄・本多 利治、敦賀気比・東 哲平両監督は、相当選手たちのモチベーションコントロールに相当、苦慮したことであろう。
その理由は緒戦の内容にある。
春日部共栄は開幕戦でセンバツ王者の龍谷大平安(京都)に、初回打者10人で5点を奪う先制パンチを浴びせ5対1と快勝(試合レポート)。波乱の今大会火付け役となった。
敦賀気比も初日第2試合で坂出商(香川)から21安打16得点を奪い圧勝(試合レポート)。
普通の高校球児であれば「満足感」にあふれて当然だ。
しかし、さすがは全国でも上位進出の経験を持つ両校。緒戦の内容がよかったからこそ、2戦目の立ち上がりが大事なことを選手たちは十分理解していた。よって試合は初回から攻めの姿勢にあふれたものとなる。
1回表、春日部共栄は1番・清水 頌太(2年・遊撃手・右投右打・164センチ64キロ・武蔵狭山ボーイズ出身)が敦賀気比先発・平沼 翔太(2年・投手・178センチ75キロ・右投左打・オールスター福井<ヤングリーグ>出身)の135キロストレートを火の出るようなあたりでセンター前へ。
小学6年時に埼玉西武ライオンズJrチームの主将としてNPB 12球団ジュニアトーナメント ENEOS CUP 2009に出場した俊英は龍谷大平安戦に続き、「満足感を打破したい」ためにストレートを選択した投手心理をよく読んだヒットでチームに勇気をもたらした。
ところが、その後はバント失敗・三振・盗塁失敗で無得点に終わった春日部共栄は、攻めの姿勢が裏目に出た形に。
これが試合の趨勢を大きく左右する。
対してその裏、敦賀気比は失策で出た先頭打者を確実に三塁まで進め、4番・岡田 耕太(3年・捕手・右投右打・173センチ80キロ・香芝ボーイズ<奈良>出身)が春日部共栄先発・金子 大地(3年・左投左打・175センチ78キロ・松戸市立小金中出身)の高めストレートを叩き、バックスクリーン左側「グリコ」看板横にぶつける驚愕の大会第17号3ラン。
攻めの姿勢が結果に表れた敦賀気比が続く2回裏にも4点を追加したことで、試合は意外にも一方的な展開で終わった。
ただ、春日部共栄も決して下を向く必要はない。
常に最大音量・最大声量を発し続けた一塁側アルプススタンドと共に9回表二死から意地の3連打で1点を返し、平沼の2試合連続完封を阻止したことは、野球に限らず今後の人生に活きるはず。
両校の示した1つの成功に満足せず、次の成功を目指す姿勢は、新チームがすでに動き出している全国の高校球児にぜひ、見習ってもらいたい。
(文:寺下友徳)