敦賀気比vs坂出商
「子供扱い」された香川県勢が今後、すべきこと
敦賀気比・平沼 翔太 写真提供:共同通信
結論から言えば、まるで「大人」と「子ども」だった。
1回表・敦賀気比先発・平沼 翔太(2年・投手・178センチ75キロ・右投左打・オールスター福井<ヤングリーグ>出身)が自慢のストレートをうまく見せ球に使い、香川大会史上最多安打を記録した坂出商打線を三者凡退に仕留めたのに対し、坂出商の守備は全く地に足がついていなかった。
その裏、抜群の制球力で20年ぶりに夏の香川を制す原動力となった左腕・金丸 智哉(3年・投手・左投左打・166センチ68キロ・丸亀市立南中出身)は、敦賀気比1番・篠原 涼(2年・一塁手・右投左打・166センチ71キロ・ 富士宮リトルシニア<静岡>出身)に遊撃横を破られると、外野失策も絡みいきなり無死三塁のピンチを背負うことに。
ここを3番・浅井 洸耶(3年主将・遊撃手・右投右打・177センチ68キロ・河南リトルシニア<大阪>出身)の中犠飛のみで踏ん張り、二死ランナーなしまで持っていった金丸だったが、そこから5番・峯 健太郎(3年・中堅手・右投右打180センチ73キロ・和歌山リトルシニア<和歌山>出身)の大会第1号2ラン含む5連打を浴びて計4点を失うと、持ち前の丁寧さはすっかり影を潜めてしまった。
以後は失点を防ぐ以前に、理詰めで攻め抜く敦賀気比から24個のアウトを取ることに汲々とする坂出商。
結果、8回の裏を終えた時、[stadium]甲子園[/stadium]のスコアボードには2003年に初出場の香川西が喫した「17失点・22被安打」に肉薄する「16失点・21被安打」が刻まれていた。
しかしこの「子ども扱い」は決して坂出商業だけの責任ではない。
2011年、巨人ドラフト1位指名を受けた大型左腕・松本 竜也など、屈指のタレントが集って甲子園1勝をもぎ取った英明以降、明確な甲子園勝利への方程式を見出せず、黒星を重ねてきた香川県勢。今回はそのツケが一気に回ってきたと言っても過言ではないだろう。
毎年7月、学校対抗を思わせる[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]の熱気は「素晴らしい」の一語。ただ、全国で勝利を得ることの素晴らしさは数段勝るし、以後の人生を勝ち抜く上でも間違いなくプラスになる。
だからこそ、香川県の野球関係者は高校のみの垣根を越え、このショッキングな敗戦を糧にして、一致団結して難局に立ち向かってほしい。日本で最も面積の狭い県だからこそ、まとまってできることはあるはずだ。
この甲子園を「思い出作り」の場だけにしてしまうのは、あまりにも勿体無い。
(文:寺下 友徳)