試合レポート

東邦vs豊川

2014.07.28

自慢のストレートで選抜4強・豊川に立ち向かった東邦・藤嶋健人!

 豊川東邦

 愛知県を代表する強豪校同士の対決に[stadium]刈谷球場[/stadium]は満員となった。
豊川の先発はエース・田中 空良(3年)。今春、チームを選抜4強に導いた本格派右腕だ。
東邦の先発は藤嶋 健人(1年)。藤嶋は東三河ボーイズ出身で、中学時代に最速140キロを計測していたといわれる逸材である。スポーツ新聞では「スーパー1年生」と形容される選手だろう。

 実際に藤嶋を目の当たりにすると、175センチと際立って身長が高いわけではない。ただ体重は78キロと下半身の体つきががっしりしており、とても高校1年生とは思えない。

 立ち上がりは2人の快投から始まった。
田中は右スリークォータ気味のフォームから常時140キロ~143キロの速球、キレのある120キロ台のスライダー、130キロ近い縦スライダーで全力投球。初回に2奪三振に取って切る。

 そして注目の藤嶋。
何度か1年生が先発マウンドに登る姿を見たことはあるが、上がってしまい、本来のボールを投げられずに終わることが多い。それは中学校を卒業して3ヶ月あまり。対戦相手を無意識に「格上」と感じているからだろう。
しかし、藤嶋は堂々としていた。初球、いきなり140キロを計測。高校1年生でこのスピードである。藤嶋も立ち上がり2奪三振を奪った。藤嶋の快投にスタンドのファンも「この1年、すごい」という声がちらほらと出てきた。

 田中も負けじと140キロ前半の速球、スライダーでモノを言わせ、三者連続三振、1回を合わせると五者連続三振である。
だが藤嶋も三者凡退、あざやかに打ち取る。速球は最速141キロを計測した。両者甲乙つけがたい快投だった。


 このまま2人の投げ合いになるかと思われたが、突破口を切り開いたのは東邦だった。

 3回表、この回先頭の7番溝口 慶周(2年)が左越えの二塁打を放ち、一死二塁となって、9番松原 正成(3年)が適時二塁打を放ち、先制に成功。二死二塁となって、2番岡田 悟志(3年)も中前適時打を放ち、この回2点をあげる。

 追う豊川は二死一塁から4番高桑 平士郎(3年)が高めに入る直球を逃さず、レフトオーバーの二塁打で1点を返す。さらに畳み掛けて同点に追いつきたいところだが、後続が打ち取られて得点ならず。

 追加点を入れたい東邦は5回表、先制の口火を切る二塁打を放った溝口が今度はライトスタンドへ消えるソロ本塁打を放つ。さらに一死三塁から1番鈴木 大輔(3年)の犠飛で4対1とする。
ここから試合は東邦ペースに。6回表には松原の適時打で1点を追加すると、松原は8回にも適時打を放ち、6対1と点差を広げる。

 一方、1年生・藤嶋は快投を続ける。
常時140キロ前後のストレートは依然として衰えず、終盤でも140キロを計測し、キレのあるスライダー、チェンジアップでカウントを稼ぎながら、追い込んでからは自信を持つストレートで、見逃し三振を奪う投球には爽快さがあった。

 そして9回裏、いよいよ東邦の勝利まであとアウト3つになった。
2番杉浦 健太(3年)に代えて、豊永 大輔(3年)。豊永が高めに入る直球を捉え、左中間を破る三塁打。続く3番氷見 泰介(3年)は三塁へ痛烈なゴロを放つが、三塁・宮澤 一成(3年)の好捕で一死三塁となった。
ここで4番高桑。高めのストレートを振り抜き、レフトスタンドへ飛び込む2ランとなった。4番が見せた意地の一撃。「1年生投手にやられっぱなしでは終わらせないぜ」といわんばかりの見事な本塁打であった。



 

 しかし反撃もここまで。その後、二死一、二塁まで追い上げるが、藤嶋は代打・中野 祐紀(2年)を渾身の140キロストレートで空振り三振に切って取り試合終了。東邦が粘る豊川を振り切り勝利を掴んだ。

 6対3。

 東邦の完勝とも言っていい試合内容だった。
豊川の田中は常時140キロ台のストレート、キレのあるスライダーの精度の高さは高校生でもハイレベルで、簡単に打ち崩せる投手ではないが、田中の速球、変化球についていくことが出来る東邦打線の高さは全国クラスと言っても過言ではないだろう。打線に勢いを付けたのは、藤嶋の快投である。

 1年生ながら、チームをけん引する活躍。その姿に、かつてのオールドファンは、バンビと慕われた坂本佳一氏を思い出す方が多いのではないだろうか。その坂本氏と比べると、藤嶋はだいぶふてぶてしさを持った投手だ。

 選抜4強相手に自慢のストレートで立ち向かい、11奪三振を奪った1年生。最後まで球威は衰えず、9回に最速142キロを計測したスタミナも本物だ。

 本人にとって心残りなのは4番高桑に本塁打を打たれたことではないだろうか。だが高桑に対しても逃げの投球ではなく、ストレート勝負が甘く入ったところを持って行かれた。良い投球を続けても失敗することは多々ある。そういう失敗を重ねながら大きくなっていけばいい。

 数年後、高校野球ファンから「藤嶋が注目されるようになったのは、豊川戦からだよね」といわれるような成長を見せることを期待したい。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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