試合レポート

横浜隼人vs桐蔭学園

2014.07.23

因縁の対戦は、またも延長で決着

 [stadium]大和スタジアム[/stadium]の4回戦、第1試合は、第2シードの桐蔭学園と、強力打線の横浜隼人が対戦。

 この両校は、5年前の夏決勝で対戦し、この時は横浜隼人が延長の末、桐蔭学園との激戦を制し、悲願の甲子園、初出場を決めた。そして今夏の4回戦で、再戦が実現。桐蔭学園のリベンジか?それとも横浜隼人の返り討ちか?

 3連休明けの平日にも関わらず、スタンドは満席、立ち見の観客で溢れ、外野も開放。気温29.4℃、湿度70%、ライト方向に追い風1.2m。11時、「因縁の対戦」のプレーボールのサイレンが鳴った。

 試合は序盤から動く。
横浜隼人は1回表の桐蔭学園の攻撃を無得点に抑え、その裏、チャンスを迎える。桐蔭学園の先発、固さの見える2年生の田村から1死の後、2番早川、3番宗の連続四球でランナー1、2塁とし、4番藤澤のセンター前タイムリーヒットで、横浜隼人が、あっさり1点を先制。その後、2死となるが、6番手塚の初球に田村が暴投、さらに手塚も四球を選んで2死満塁と追加得点のチャンスを迎える。
しかし、ここは桐蔭学園の先発、田村が7番の橋本を三振に仕留め、最少失点で凌いだ。

 2回表、今度は桐蔭学園がすぐに反撃に出る。
横浜隼人の先発、左腕の橋本から1死後、6番鎌田が死球で出塁し、バッターは7番飯野。1ストライク後、強振すると、ボールは3塁線を鋭く抜ける2ベースとなり、1塁ランナーが還って、まず同点。さらに続く8番笠井が、今度は逆に1塁線を破る2ベースを放ち2点目が入る。下位打線の連続タイムリーで桐蔭学園が逆転に成功した。


 1回の満塁の大ピンチを凌いだ桐蔭学園の先発、田村はその後、尻上がりに調子を上げ、3回、4回、5回と横浜隼人の強力打線を3者凡退に抑える。
さらに4回表は、8番笠井のライト前ヒットの後、外側の球を上手くバットに乗せてレフト線に運ぶ2ベースを放ち、田村は自らのバットで3点目を入れる。5回が終了し、桐蔭学園が3対1とリードしてグラウンド整備に入る。

 グウランド整備の後、6回裏、試合が動く。
既に気温は30℃を超えた。2回以降、快調なピッチングを続けていた田村から、横浜隼人の2番早川が流し打った打球は追い風にも乗り、ライトスタンドに飛び込むソロホームランとなり、3対2と1点差に詰め寄る。

 さらに続く7回裏、3番宗の強烈なラインドライブのライト前ヒットと4番藤澤の四球で、横浜隼人は無死1、2塁と大きなチャンスを迎える。ここで桐蔭学園は、先発の田村を諦め、ピッチャーをエースナンバー1の小室に交代。
この小室に対し、横浜隼人は5番野田が丁寧に送りバントを決めて1死2、3塁とチャンスを広げ、3戦連続ホームラン中の強打者、6番手塚が打席に立つ。横浜隼人にとっては、まさに願ってもないこの場面。

 カウントはフルカウントとなり、1塁ベースが空いているので、敬遠かと思われたが、桐蔭学園バッテリーは強気に攻め、小室はスラッガー手塚に外のスライダーを振らせて見事、三振。横浜隼人は絶好の同点、逆転のチャンスを逸した。

 試合は桐蔭学園が1点リードのまま終盤へ。
桐蔭学園の2番手、小室の変則フォームから繰り出される投球に横浜隼人打線は手を焼き、9回裏も2アウト、ランナー無し。いよいよ万事休すと思われたが、小室が7番橋本の代打、深野に死球を与えてしまい、さらに8番百合野が四球を選び、ランナー1、2塁。ここで横浜隼人の水谷監督は9番の伴に代えて、大堀を打席に送る。この代打策が見事に当たり、大堀は右中間にヒットを放ち、横浜隼人は土壇場で3対3の同点に追いついた。


 桐蔭学園は3番手投手に須永を投入して後続を打ち取り、何とか試合を延長戦に持ち込んだが、こうなると形勢は一気に逆転し、試合は完全な横浜隼人ペースとなる。
横浜隼人は10回から登板した2番手の柏原が桐蔭学園打線を無得点に抑え、逆に11回裏、その柏原のセンター前ヒットを皮切りに、最後は8番百合野が桐蔭学園の須永からレフト前にサヨナラヒット。横浜隼人が死闘を制して5回戦進出を決めた。

 横浜隼人は、窮地で力を発揮する伝統の粘りで、強豪対決を制した。
今大会はノーシードだが、戦力的には影の優勝候補と言え、今後の戦いぶりが楽しみである。逆に桐蔭学園は終盤まで優位に試合を進め、あと一人というところまで横浜隼人を追い込み、勝利をほぼ手中にしかけたが、最後に力尽きた。
これは結果論だが、9回、小室が死球を与えた段階で速やかに投手を須永にスイッチしていたら、試合終了だったかもしれない。

 しかし、桐蔭学園の大川監督は、この大事な横浜隼人との一戦に、小室でも須永でもなく、リスクを承知で2年生の秘密兵器、田村を先発させ、その田村が横浜隼人の強力打線を相手に試合を作った。これは秋以降につながる収穫と言えるだろう。実力伯仲、紙一重の、手に汗握る大熱戦だった。

 横浜隼人は24日、[stadium]神奈川県立保土ヶ谷公園硬式野球場(保土ヶ谷・神奈川新聞スタジアム)[/stadium]で藤沢翔陵と対戦する。

(文=松田祥二郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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