高松商vs高松一
高松商業を大勝に導いた「次」の意識
この試合、特に勝った高松商業について記したいことは山ほどある。
たとえば1回表・二死二塁から真ん中高めスライダーをまるで中田 翔(大阪桐蔭→北海道日本ハム)のように泳ぎながらもレフト中段まで運んだ4番・末包 昇大(3年・三塁手・右投右打・187センチ97キロ・坂出市立東部中出身)の高校通算11号・大会第6号となる先制2ラン。
その末包の4打数4安打2打点を含め、秋季四国大会に登板した高松一の2投手から21安打13得点をあげた打線の短く鋭いスイング。そして高松一の反撃をかわす絶妙の3投手継投…。ただ、ここで触れたいのは高松商業の攻守に見えた「次」の意識である。
象徴的なシーンを1つあげたい。高松商業が4点を先制して迎えた2回裏・高松一の攻撃。一死三塁における高松商業の守備だ。ここで三塁ゴロを本塁挟殺プレーとした内野陣は、打者走者が二塁に進むのを見逃がさずすかさず二塁へ送球。ここで併殺プレーを完成させたことが試合の流れを決めた。
また、7回表で一死一・三塁からスクイズを失敗した場面でも、高松商業の打者走者はすかさず二塁へ進塁。この回は得点こそなかったが、このプレッシャーを与え続ける姿勢が8回の4得点につながったといっても過言ではないだろう。
「次」を常に考える。これは高松商業・長尾 健司監督が3月まで籍をおいていた中学軟式野球界では最も重要視される思考でもある。本来、野球において普遍の考えであるこの思考を高校野球界に持ち込み、徹底した彼ら。すなわち、この大勝は偶然でなく極めて必然の結果であった。
(文=寺下友徳)