香川中央vs琴平
ノーヒッター・中務 貴之(香川中央3年)の魅力
1回戦では三豊工業相手に自ら犠飛であげた1点を守りきり、打者30人に110球・犠打1・四死球3・10奪三振で大会12年ぶり、史上6人目となるノーヒットノーランを達成した香川中央・中務 貴之(3年・投手・右投右打・172センチ66キロ・高松市立香川第一中出身)。この試合では左翼手で先発し6回からリリーフしたが、その魅力は健在だった。
まず素晴らしいのは一本足で立った際のバランスのよさ。よって全身バネのようなしなりから、壁を殴るかのように繰り出される腕振りは、ストレートでも変化球でも一定している。また、最速137キロを記録したストレートに、120キロ台の縦スライダー、110キロ台の横スライダー、100キロ台のカーブ共にインロー・アウトローへの伸びは抜群。なるほど、これを打ち崩すのは相手打線にとって至難の業だ。
結果、琴平も頼みの低めへの制球がすべて高めに抜け、3回で6点を失い降板となった昨春県大会準優勝投手・篠原 涼矢(3年・投手・右投右打・174センチ70キロ・琴平町立琴平中出身)の無念を晴らすべく、食らい付きにいったが安打は1本のみ。3回で4奪三振を喫してしまったのも致し方ないと言えるだろう。
香川中央は中務以外のチームメイトも奮起する。打線は女房役の6番・植田 東吾(3年・右投右打・170センチ66キロ・高松市立山田中出身)の2ランなど13安打10得点。先発の上西 元気(3年・投手兼一塁手・右投右打・180センチ79キロ・高松市立香東中出身)も最速131キロをマークしたストレートをはじめ、終始強気のピッチングで5回3失点(自責点1)と先発の責任を果たした。
こうして戦前は接戦が予想された琴平相手に8回コールド勝ちし、2006年以来8年ぶりとなる大会2勝と、2011年以来3年ぶりとなる3回戦進出を決めた香川中央。強打線が魅力のシード校・丸亀城西との対戦では2005年夏には部長として橋野 純監督と共に甲子園出場を果たした山口 安亮監督の「恩返し戦」以上に、ノーヒッター・中務のピッチングに注目が集まりそうだ。
(文=寺下友徳)