試合レポート

日大鶴ヶ丘vs日大二

2014.07.16

「流れ」無視の骨太第1シード

 今大会の第1シード校・日大鶴ヶ丘が初登場。1回戦から勝ち上がってきた日大二の挑戦を退け、難しい初戦を突破した。

 試合には「流れ」というものがあるが、この試合ではどっちつかずの展開が続いた。どこか類似性を感じる序盤3回までの攻撃を両校ごとに見てみる。

 日大鶴ヶ丘
1回。先頭の樋田翔平選手(3年)がセンターオーバー三塁打。1アウト後3番・山岸哲也選手(2年)のセカンドゴロの間に生還し先制する。
2回。先頭の栗田優一選手(3年)がヒットで出塁。さらに四球と死球で2アウト満塁のチャンスを作るも追加点ならず。
3回。9球で三者凡退。

 日大二
1回。先頭の坂本有輝選手(3年)が死球で出塁。しかし送りバントができず、その後盗塁で得点圏にランナーを進めるも得点ならず。
2回。先頭の5番・横川隆之佑選手(3年)がエラーで出塁。しかし続くバッターがダブルプレーでチャンスを広げられず。
3回。7球で三者凡退。

 1、2回とも先頭打者を出したところは両チーム共通するところ。日大鶴ヶ丘は先制したものの、2回のチャンスはいかせず。
一方、日大二は1、2回とも先頭打者出塁を相手からもらった形になった。しかし自らのミスもありつけこめず。ならば、と3回表は三者凡退に抑えリズムを作ったかに見えたが、その裏の攻撃でおつきあいするかのように三者凡退してしまった。

 両チームとも、ピンチを抑える一方でチャンスをいかしきれない。相手から流れをもらえるようで自分たちでお返ししてしまう。


 4回、日大二はこの試合二度目の満塁のピンチを切り抜けるが、その裏の攻撃でまたも三者凡退してしまった。
立ち上がりから日大二に気持ちよく打たせなかった日大鶴ヶ丘の先発・小林晃大投手(3年)の好投が試合序盤の絶妙な均衡状態を作ったともいえる。
「チャンスの裏にはピンチあり」という言葉があるとおり、チャンスをふいにした次の回は攻め込まれがちだが、小林投手はそんな言葉など関係ないとばかりに淡々と抑えた。

 日大鶴ヶ丘に「流れ」のようなものが唯一見えたのは5回の攻撃。
先頭の1番・樋田選手がレフト前ヒットで出塁、定石どおり送った後、3番・山岸選手が二塁打、4番・西田賢太選手(2年)のセンター前ヒットと流れるような2連続タイムリーで2点を追加する。
日大二は粘投してきた先発の村田匠投手(2年)からエース・船岡直人投手(3年)に継投するも失点を加えた。

 日大鶴ヶ丘は6回にも2点を追加するのだが、5回から流れに乗ったのかというとそうではない。
この回も先頭の7番・金井浩太朗選手(3年)が死球で出塁したが、続くバッターが2者連続で送りバントを失敗。自らチャンスを潰したかに思われた――直後に1番・樋田選手の特大2点本塁打が飛び出した。

 本来「流れ」とはポジティブなプレーが続いて生まれるものだが、なかなか続かない。どこか「ぶつ切り」感があるのだ。
しかし流れなど関係なくゴリ押しで加点するように見える日大鶴ヶ丘


 5対0となり、このまま押し切るのか――に見えた7回、日大二が反撃する。
先頭の3番・但野真一選手(3年)が左中間を破る三塁打。続く4番・新田丈選手(3年)がライト前へ意地のタイムリー。
日大鶴ヶ丘はこのタイミングで小林投手からエース・秋山翔投手(3年)へ継投するが、代わりばなを攻められ8番・船岡選手にもタイムリーを許す。

 8回裏。この試合2回と続かない「流れ」が日大二に見えかけた。
先頭打者がストレートの四球で出塁。日大鶴ヶ丘・秋山投手の制球が定まらないのだ。続く2番・三草丈選手(3年)も3ボール1ストライクに。次の投球がこの試合を左右する一球となった。

 内角へのストレートがキャッチャーミットにおさまると、三草選手が1塁側へ歩き出す。ボールと判断したのだ。しかし少しの間の後、球審が下した判定はストライク。結局レフトフライに倒れ、続くバッターはダブルプレーになってしまった。
もしあの一球がボールだったら連続四球となりノーアウト1、2塁。日大二に確かな流れが生まれ、試合の趨勢は大きく変わっていた可能性がある。

 対する日大鶴ヶ丘は9回にエラーから1点を追加。しかしその後のチャンスは走塁ミスでふいにするなど、流れのぶつ切り感は最後まで消えず。
しかし勝利をきっちりおさめるところに、骨太な力強さを感じる。それがこの試合に限ったものなのか、本物なのか。次戦も注目だ。

(文=伊藤亮

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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