試合レポート

樹徳vs高崎商

2014.07.14

23年ぶりの聖地へ 春の優勝校・樹徳が苦しみながらも初戦突破!!

 この日のお目当ては群馬の、というより全国的にも注目を集める樹徳の中心打者、野平大樹(3年・遊撃手・右投左打・182cm/83kg)の走攻守。
試合前のシートノックではボテボテの緩いゴロを捕るときの足運びが目を引いた。大きいストライドで前に出て、打球が近くにきたら細かなステップでバウンドを合わせる――これをきっちりやっていた。

 さらに打球を捕ってから次の動作に移るまでのスピードが速い。グラブトスを交えたプレーは「プロ」と言わないまでも、東京の大学生を見ているような錯覚を覚えさせられた。脚力は5月3日の群馬大会準決勝健大高崎戦の第2打席で三塁打を放ち、このときの三塁到達が俊足と認めていい11.96秒を計測。十分“健脚”と表現していいレベルである。

 この日の高崎商戦はどうだったのか、というと4打数ノーヒットだった。第1打席が1ボールから打ってライトフライ、第2、4打席は初球を打って二塁ゴロとレフトライナー、第3打席は1ボール1ストライクからの3球目のストレートを打ってショートフライと、積極打法が仇になった。ちなみに、二塁ゴロのときの一塁到達タイムは4.45秒と普通である。

 野平の早打ちには定評がある。関東大会2回戦(初戦)の東海大浦安戦では4打席中、見逃しのストライクが1球しかなかった。こんな野平に、12年夏の選手権大会に11回目の出場を果たしている高崎商のバッテリーが初球に甘い球を投げるわけがない。内角を中心に厳しいコースを攻められ、これに野平は早打ちで対抗しようとした。そもそもの考え方にミスがあったと言わざるを得ない。

 この野平を含めた樹徳のスターティングメンバー中、左打ちは7人と多数派を占めたが、これが苦戦の原因と言っていい。高崎商の先発・熊川達大(3年)は力むと三塁方向の高めにストレートが抜ける傾向にあり、右打者にはいかにも投げづらそうだった。しかし、樹徳のスタメンに右打者は2人しかいなかった。


 5回表の樹徳の加点は2死一、二塁の場面で打席に立った5番鈴木利至規(3年・右翼手・右投右打・169cm/75kg)の三塁打によるもので、内角高めに抜けたあとの真ん中ストレートを振り抜いて左中間を深々と破り、2者を迎え入れた。

 樹徳の生命線は3番野平、4番金井駿介(3年・一塁手・右投左打・188m/96kg)と言われるが、この2人が徹底的にマークされれば、その後を打つ5番打者にチャンスの場面が多く訪れるのは自然の理である。第1打席は無死一塁で死球、第2打席は2死一、三塁でショートフライ、第3打席は2死一、二塁で2点三塁打、第4打席は先頭打者でセカンドフライトと、期待に応えたのは2打席だけだが、その内の1打席が樹徳に貴重な2点をもたらした。功労者と言っていい。

 樹徳の先発、ホジャティ博和はよく投げた。最大の武器はテンポの速さ。キャッチャーからのボールを受け取って、投球モーションを起こすまでの速さはおよそ3~4秒台。この猛烈な速さに高崎商の各打者は面食らったと思うが、打席を外して息を整えるとか、ホジャティのペースをかく乱する作戦はあってもよかった。あまりにも律儀にハイペースに付き合い、12個のフライアウトを量産してしまった。

 一緒に観戦した県内の関係者に聞くと、群馬には「春の優勝校は夏に勝てない」というジンクスがあるという。春の優勝校、樹徳はこのジンクスを打ち破れるだろうか。

(文=小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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