明徳義塾vs高知
深み、狙いのある一戦と「明徳キラー」鶴井拓人の存在感
2打数1安打2四死球、サヨナラのホームも踏んだ3番・西岡（明徳義塾）
昨年8月29日の県選抜野球大会（新人戦）決勝戦以来、2014年に入ってからは初となる永遠のライバル対決。
この試合もこれまでの対戦同様に、見所満載の2時間17分となった。
明徳義塾は多田 桐吾左翼手（3年）、真田 一斗右翼手（2年）のセンバツ組2名はけがにより登録外、岸 潤一郎（3年・主将）は4番・三塁手で先発出場。よって先発マウンドに立った飛田 登志貴（2年）は、2回表に二死一・二塁から9番・鶴井 拓人投手（2年）に適時打、続く3回にも連打を浴びた無死一・三塁から4番・川上翔太捕手（3年）に中犠飛を上げられ２点のビハインドを背負う。
その後、飛田は100キロ台のカーブを巧く使い7回2失点と責任を果たしたが、打線は「チャレンジマッチなので犠打を多用する戦い方をしなかったが、誰かが打っていたら4点は取れていた」と馬淵 史郎監督が語ったように、やや精彩を欠く中盤までだった。
それでも終盤に強いのが明徳義塾の真骨頂。7回には無死一・三塁からセンバツで15打数７安打２打点と大ブレイクした3番・西岡 創太一塁手（3年）の中犠飛。ここで2番手マウンドに上がった高知エース・酒井 祐弥（3年）の暴投後、岸の右翼線適時打で同点に追いつく。
しかしながら8回表から2番手マウンドに上がった岸もスコアボードに「0」を並べることができなかった。二死から代打・上田 隼人（3年）に右前に落とされると、二盗後に7番・松本 歩左翼手（3年）にレフト線へ引っ張られて再び高知に勝ち越しを許すことに。ただここは「外角のカットボールを使ったが、中途半端な要求でヒットゾーンに飛ばされてしまった」と女房役の水野 克哉（3年）が悔いる投球も、裏を返せば「格好が悪くても岸の変化球についていく」（島田 達二監督）高知の執念が実った形。両指揮官共に内容は「イマイチ」と評したが、このワンポイントを抽出しただけでも「狙い、深み」がうかがえる。
新人戦決勝での10回1失点に続きこの試合でも6回3分の1で2失点と好投した鶴井（高知）
結局試合は、9回裏四球・盗塁・安打・死球で迎えた無死満塁から5番・安田 孝之遊撃手（3年）が逆方向三遊間へ逆転サヨナラ打。明徳義塾が1位校として地元開催の春季四国大会へ臨むことになったが、夏の最終決戦へ向けての腕試しとしては、両校共に収穫ありの一戦だった。
ところで、この試合で最も存在感を見せていたのは高知の先発マウンドに立った「明徳キラー」である。新人戦決勝で10回1失点（自責点0）の実績を買われ、再び明徳義塾に対峙することになった2年生左腕・鶴井 拓人がその人だ。
90キロ台はカーブ、110キロ台はスライダーと稀に投げるチェンジアップ、120キロ台は最速128キロのストレートと球速帯は3種類。ただ、右打者の明徳義塾・岸いわく「内角へのボールは真っ直ぐ来るが、外角のボールがシュートしてくる」独特の球筋は、6回3分の1で７被安打と両陣営共に「調子が悪い」との評価する中でも2失点に封じる安定感を有している。
大阪・門真第五中学時代は軟式野球クラブチームの雄・門真クレイジーボーイズに所属。
その時に培った大先輩・岩見 優輝（熊本工業高校→亜細亜大→大阪ガス→広島）を思わせる「外角からの出し入れ」に加え、現在左打者への決め球として習得中の変化球が間に合えば、夏の大舞台でも彼の力が大いに威力を発揮しそう。
これに対し新人戦では4打数ノーヒットから一転、この試合では鶴井に対し4打数3安打。「引き付けて甘い球を逃さなれば打てる」と語った2番・森 奨真二塁手（3年）をはじめ、攻略ポイントがおぼろげに見えてきた明徳義塾。もし夏の甲子園をかけた激突があった場合、どちらの「積み上げ」が勝るかも勝負のかぎの1つになるだろう。
（文＝寺下 友徳）
